乳房再建にはいくらかかるのか?
がんとお金の問題は、かかる治療費だけではない!
ちなみに私の場合、再発防止の治療はホルモン療法のみだが、この約6年間で約330万円かかっている。その約半分が乳房再建費用だ。その当時、人工物再建は保険適用外で、全額自己負担だったためだ。
もし、今後A子さんが乳房再建を行うなら、自家組織再建の場合はおおよそ約30万~60万円。また、自家組織でない場合は、ティッシュエキスパンダー挿入手術(皮膚を拡張)に約10万~20万円かけた後に、シリコンインプラントへと入れ替えるのに別途約30万円がかかる(いずれも3割負担の場合。ただし、高額療養費適用後はさらに軽減可で、70歳未満で年収約370~770万円までの方なら実質的な自己負担は約8万円程度となる)。
そして、がんとお金で考えなければならないのは、がんにかかる治療費(支出)のことばかりではない。がんによって会社や仕事を休んだり、辞めたりした場合の「収入減」の問題もある。
前掲のA子さんにしても罹患前の収入は約600万円あったという。がん患者の就労に関する調査によると、罹患後2~3割の人が退職しているという結果もある。がんによる支出の増加と収入の減少。まさに家計にとってはダブルパンチといえるだろう。
▼女性の罹患率第1位! 乳がんを予防するには?
さて報道では、北斗さんが毎年乳がん検診を受けていたことも大きく取り上げられている。北斗さんは、毎年きちんと検査を受けていたのに、なぜ発見できなかったのかについては、中間期がん(*)の存在やがん検診の見落とし、非常に早いスピードで大きくなるがんのことなどが挙げられている。
*乳がん検診を受けてから次の検診までの間に自覚症状が出現して、発見された乳がんのこと。
いずれも、さもありなん。とくに乳がんはとても診断の難しいがんだそうだ。これまでも全国各地で、乳がんと誤診されたために乳房を切除された医療事故も少なくない。
実際に私も、検診で良性だと言われていたにも関わらず、急に悪性だと告げられた患者さんのお話を何人も耳にしている。
現在、乳がんの対策型検診として推奨されているのは、40歳以上を対象に2年に1回の「マンモグラフィ検査+視触診」である。ただし、年齢に応じてマンモグラフィ検査と超音波検診を併用するなど、定期的に適切な検診を心掛けることが重要である。
そして、検査の見落としを防止し、精度をアップさせるためにも、マンモグラフィ検査を受ける場合は、日本乳がん検診精度管理中央機構の「検診マンモグラフィ読影認定医師」に認定されている医師がいる病院かどうかもチェックしておきたい。
ただし、検診は100%の保障ができるものではない。「検診を受けたから2年間は安心」と思い込まないこと。乳がんは唯一自分で発見できるがんとも言われている。普段から自分の胸をチェックする「自己検診」をしておけば、直径2cm(1円玉サイズ)の早期がんの状態で発見することも不可能ではない。
もし、がんが見つかったとしても、早期に発見でき、適切な治療を行うことができれば、がんは完治する病気だということを覚えておいて欲しい。