手術・治療など費用は、3年で178万円
北斗さんが今後どのような治療を受け、どれくらいお金がかかるのか。このテーマで原稿執筆を編集部から依頼されたが、こういったことを単なる憶測で述べるのは、同じ乳がん患者としてやるべきではない(誰だって、自分のことをあれこれ好き勝手に言われるのは嫌なものだろう)。
とはいえ、もし乳がんに罹患した場合、どれくらい費用がかかるのかは、多くの方々の関心事であると思う。そこで、北斗さんと同じステージII B期の乳がん患者Aさんの実例を挙げてご説明しよう(費用一覧は、後述)。
A子さん(45歳)は約3年前に乳がん告知を受けた。
右乳房全摘手術後、化学療法と放射線療法を受け、現在もホルモン療法を続けている。北斗さんと同じくリンパ節廓清を行ったA子さんは、約1年前からリンパ浮腫を発症。定期的に治療に通うが、全額自己負担のため、費用がかさむのが悩みだ。
A子さんが、がん告知前後からかかった費用は約3年間で約178万円。
健康保険などが適用になる手術や再発防止のための化学療法、放射線療法、ホルモン療法や定期検査の費用は約100万円だが、差額ベッド代など実費負担のものが約15万円、治療の副作用を緩和させるための費用や交通費、リンパ浮腫の治療費などは全額自己負担で約63万円かかっている。
このように、病院に支払った医療費以外に、さまざまな費用がかかるのとはA子さんは想像もしなかったという。
たとえば、治療の副作用による脱毛のためのウイッグ(かつら)や帽子の購入費。吐き気や倦怠感、頭痛などを緩和するための漢方薬の費用。再発予防を考えて健康食品やサプリメントの服用などなど。
毎日、野菜ジュースが欠かせなくなり、専用のジューサーも買ったし、主治医から肥満は大敵と言われたので、スポーツジムやヨガにも通った。その費用は、A子さんの毎月の家計をじわじわと圧迫するが、再発・転移を考えると、やめられないという。
なお、一般にがんは早期で発見されれば、再発リスクも低減され、費用負担が軽くなる可能性がある。ただ、その方の症状に合わせて治療を行うので、費用はケースバイケースだ。
第3次対がん総合戦略研究事業「がんの医療経済的な解析を踏まえた患者負担の在り方に関する研究」2013年度報告書(代表/濃沼信夫・東北薬科大学教授)によると、がん患者の平均自己負担額は、ステージI 69.3万円、II 67.2万円、III 90.5万円、IV 114.2万円。ステージIII以降は、明らかに高額化していることがわかる。