海外で稼ぐ割合が増えた日本企業は、目まぐるしく変化する世界情勢の影響をまともに受けるようになっている。いっときの成功に酔いしれている暇はない。2015年、新しくトップに就任した男たちはどんな戦いを挑むのか。

アジア・インドの社会インフラ整備に照準

国内鉄鋼市場は安倍晋三政権の国土強靭化基本計画や2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックで当面、堅調な需要が見込まれる。だが、20年以降は人口減少などの影響もあり、見通しは明るくない。国内の需要減を補いつつ成長するには、海外市場のさらなる攻略が必須。JFEホールディングスの林田英治社長に聞いた。

――歴代トップは技術畑出身者が並ぶが、管理部門が長かった。
JFEホールディングス社長 林田英治氏

【林田】入社後、最初の配属が経理だった。正直に言うと最初は「製造会社に入社したのに、なぜ会計なんだ」と思っていた。しかし、上司の言う通り勉強していくと、会社の仕組みがわかってきて面白くなってきた。経理が理解できると、「ここを工夫するとコスト削減のインパクトが大きい」など現場の人とも活発に議論できる。

――若手の頃、印象に残っている仕事は?

【林田】労働組合の役員を務めたが、大変勉強になった。春闘で満額回答をもらえずにギリギリの妥結をした後、組合員にその内容や経緯を説明する必要があった。旧川崎製鉄本社の組合員は気性が激しいことで有名。そのため難しいところがあったが、理屈を明確にして誠実に説明することで理解してもらえた。この経験は、その後の海外との提携交渉などでも活きた。交渉の場で、その場しのぎのウソはダメ。都合が悪いことも明かして、誠心誠意、相手ととことん話をする。それが私の信条になっている。

――02年、NKKと川崎製鉄の統合時は経理部長だった。

【林田】99年に経理部長になったとき、指示を受けて数人のチームで統合の検討を始めた。具体的には、両社の財務内容をとことん精査した。それまで日本企業の統合には暗黙の了解で決まる部分があったが、私たちは外資系投資銀行を統合交渉に参加させて、お互いのデューデリジェンス(資産価値の算定)を徹底的にやった。事前に、お互いの財務上の問題などがすべてオープンになっていたからこそ、統合がうまくいった。