7年前から「19時前退社」に

私がそういう性分ですから、社員にも同じように仕事にも遊びにも全力投球してほしい。そんな思いから当社では2007年から「19時前退社の励行」に取り組み始めました。

私自身が若い頃、朝早く出社し、夜は22時、23時退社がざらという働き方をしていました。毎日夜遅く、いつ帰れるかもわからないので友人と会う約束もできないし、何も自分のことができません。

この問題で支店長とぶつかったこともありました。「こんなに遅くまで仕事をするのはおかしい」といったところ、翌日、定時の17時10分に支店長から「おまえは帰れ」といわれ、「そういうことをいっているのではありません」と大いにもめたんです。そのときは会社を辞めてやろうかと思いました。

自分が社長になったときは、もうそこまでひどい状況ではありませんでしたが、それでも遅くまで社員が仕事をしている実態がありました。

私は女性にもっと活躍してもらう必要があると考えていたので、これではいけないと思いました。毎日帰りが遅い職場では、女性は活躍できずに辞めてしまいます。終業時間をきちんと決める必要がありました。

19時前退社になってみんな飲みにいくのかと思ったら、英語やCFP(ファイナンシャル・プランナー)などの自己研鑽に励む人が増えました。CFPは証券アナリストと同じくらい難しい資格です。会社としてもCFPの取得者数の目標を掲げたところ、10年の約300人から14年の8月には570人に増え、金融機関ナンバーワンになりました。みんな自分のブラッシュアップのために使っているようです。

また、当社は結婚や出産などのライフイベントを迎えても仕事を続ける女性が増えています。それは時間がきちんと管理されていることも関係しています。しかも、女性がたくさん昇進しています。仕事を頑張らなければ昇進はしませんから、その意味では19時前退社の励行が、女性が頑張る原点になっています。

最近、ワーク・ライフ・バランスが注目されるようになりました。これはとてもよいことだと思います。我々の世代が若かった頃は、人生のすべてを会社に捧げる時代でしたが、もはやそれではダメです。働き方も持続可能でなければいけません。

【QUESTION】残業を減らされると逆に不安です
早朝から深夜まで働きっぱなしなんて、普通できません。みんなどこかでサボってるはず。営業マンに多いのは、5時半頃外出先から戻り、「腹減った」となって、ラーメンを食べにいっちゃうというパターン(笑)。だから、結局21時くらいまでかかってしまう。この時間をなくせばいいだけです。
大和証券グループ本社会長 鈴木茂晴
1947年、京都府生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、大和証券に入社。97年取締役、98年常務などを経て、99年大和証券グループ本社常務兼執行役員、2004年執行役社長。11年から取締役会長を務める。
(宮内 健=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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