では、不幸にして、認知症らしき言動を見つけたときはどうすればいいのか。

「問題行動を指摘しても、本人は『ぼけてない』と言うでしょうね。多くの場合、実際に受診するまでに2、3年かかっています。この足踏みの期間が危ないんです。その間に病気が進行すると薬が効かなくなる。だから早期発見が重要なのです」

ようやく重い腰を上げて受診する気になっても、いい病院は予約でいっぱいだという。

「専門医はだいだい1~3カ月待ちは当たり前です。認知症の診断は30分から1時間程度かけてじっくり行うため、どうしても時間がかかってしまうんです」

すると、今度の夏休みに親を病院に連れていこうと思っても、3カ月待ちと言われて、今度は会社が休めず、「じゃあ次の長期休暇でいいか」というふうに先延ばしにしてしまう。

「3カ月くらいで病気が進行するわけではないが、半年だと多少変わる可能性がある」

だからこそ、早期発見・早期治療が大事なのだ。

「おかしいなと思ったら、迷わず各市町村にある地域包括支援センターに相談してください。ここは福祉のコンビニと言われていて、専門医も紹介してもらえるし、どう対応すればいいのか相談に乗ってくれます」

「G8認知症サミット」。認知症は世界的な課題に。

もちろん、自分でも調べることはできる。

「日本認知症学会のウェブサイトには、専門医の一覧がある。また、全国に300ほどある認知症疾患医療センターで受診するのもお勧めです」

本人がすんなり診察を納得してくれれば苦労はないが、なかなか病院に行こうとは切り出しにくいもの。妙案はないか。

「例えば配偶者が『私が診てもらうので一緒に来て』と言って、ついでに診てもらう手があります。役所から健康診断の通知があったと言って連れていくのもいいでしょう」