息子が父を、娘が母を。老親を介護する上で本当に困ったこと、意外に辛かったこととは? すべての介護ビギナーに送る「転ばぬ先の杖」。

親の介護は「知らなきゃバカ見ることだらけ」だ

プレジデントオンラインで「親技のカガク」という連載をしている鳥居りんこさんとお会いし、介護の話をしました。

りんこさんは『偏差値30からの中学受験合格記』というベストセラー本を著したことで知られる受験カウンセラーですが、つい最近『親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(ダイヤモンド社)という介護体験談を出版されました。老親の介護体験をしたという点で、私と同じ立場にあるわけです。

『鳥居りんこの親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ』(ダイヤモンド社)。ケアマネージャーや介護業界の人が書いた本と異なり、あくまで親をお世話する介護初心者の子(ユーザー)の視点で、介護申請の方法から施設探しまで解説してくれる。

ただ、互いが置かれた環境は異なります。

私の場合は父親と同居しており、しかも一人っ子。父が突然寝たきりになった時、当然のようにその介護をひとりで引き受けることになりました。父の衰えが急激で介護は1カ月半ほどで終了しましたが、それでも大変な思いはしました(本サイト連載「介護ドキュメント 親を看取るということ」参照)。

一方、りんこさんが介護することになったのは、実家で1人暮らしのお母さん。りんこさんにはお姉さんとお兄さんがいますが、介護は実家近くに住むお姉さんとクルマで1時間半ほどの場所に住むりんこさんが手分けして行うことになりました。

お母さんに介護が必要になったのは7年ほど前で、6年間は在宅で介護したそうですが、延々と続く介護の日々に姉妹の精神的・肉体的疲労は限界に達し、施設での介護を決断。現在、お母さんは介護付き有料老人ホームで生活しているそうです。

その長きにわたる在宅介護の苦労、そこから得た読者のためになる知識、親を施設に入れることに対する葛藤などが、りんこさん流の愛情あふれる毒舌で書かれているのが同書です。

▼苦労、悩み……それぞれの介護

ひと言で「介護」といっても、要介護者本人の状態や家庭の事情などによって、苦労も抱える悩みも大きく異なります。私とりんこさんのケースは対照的といっていいでしょう。

短期と長期、同居と別居、一人っ子と兄弟あり、在宅で終わるか施設に入るか、加えて父と息子、母と娘の違いもあります。当欄の担当編集者からすれば両極ともいえる介護体験者が身近にいた。ふたりが話をすればさまざまな状況に対応する情報が提供できると考え、私とりんこさんの対談が実現したというわけです。