「ホーカツ」「キョタク」の意味がわからない
りんこさんは著書のタイトルを「親の介護は知らなきゃバカ見ることだらけ」にしているように、知らないでいること、受け身の姿勢でいることをいけないとしています。仮に受け身でなかったとしても、介護保険を利用しサービスを受けるうえでわかりにくいことが多すぎます。
その代表例が介護業界で当たり前のように流通している用語です。
りんこさんは同書で、初めて介護の相談に行った時、役所の担当者の説明の意味がよくわからなかったと言います。担当者はこう言いました。
「それでは介護や支援の必要のあるなしを判断するために介護認定を受けていただきます。認定申請はご自身やご家族の方でもできますが、申請作業のよくわからない場合は、ホーカツ、キョタク介護支援事務所などでも代行してもらえます。どうされますか?」
「ホーカツ」と「キョタク」。これが何のことかさっぱり理解できなかったと書いています。少し考えて、こう想像したそうです。
「ホーカツ」=「呆活→ボケている人対象のこと?」
「キョタク」=「巨卓?→何?」
実は、私も全く同様で、役所から帰宅後にすかさずネットで調べました。すると……。
「ホーカツ」=地域住民の保健や福祉を総合的に担当する「地域包括支援センター」
「キョタク」=要介護認定の申請などを行う「居宅介護支援事務所」
の略であることを知りました。
お役所は堅苦しい言葉を一般向けに親しみやすくしようと、こうした略語にしたのかもしれませんが、かえってわかりにくくなったことは事実です。
▼わかりにくい専門用語で利用者を追い払う?
昨年、要介護認定者数は600万人を超えました。2002年は300万人でしたから、13年ほどで倍増、介護給付総額も約5兆円から10兆円を超えるまでになりました。このまま要介護者が増え続けたら財政は破綻してしまいます。「だから国は、少しでも負担を減らすために一般人には日常あまり使わないわかりにくい用語を使っているんじゃないですかね」なんて話になったほどです。
実際、りんこさんの知人には、お母さんが認知症になって徘徊して困っているのに、理解不足から介護保険を利用していない(できない)人がいるそうです。そうした介護が必要なのに、福祉の恩恵を受けずに放置されている人たちはかなりの数、いるのではないでしょうか。
りんこさんが同書で最も力を入れて主張しているのは、
「福祉は自己申告。待っていては誰も助けに来てくれない。上手く利用した人だけが得する仕組みだから、賢くならなければならない」
ということです。
次回からは、私とりんこさんの状況の違いを含めた介護体験を織り交ぜつつ、どうしたらより良い介護ができるかを書いていこうと思います。