介護サービスを受けるまでの「ハードル」

1カ月半で介護を終えた私と比べれば、7年間の介護を経て、今も継続中のりんこさんは年季の入り方が違います。「話が噛み合うかな」という思いもありましたが、それは杞憂でした。

介護をすることで良くも悪くも親と子の関係は濃密になります。感情をぶつけ合うこともあるし、それによって自己嫌悪に陥ることもある。そうした共通項があるせいか、共感できる部分が多々ありました。

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介護保険を利用したいときは、役所や地域包括支援センターに置いてある、もしくは自治体サイト内のPDFにある、こうした用紙に書いて提出する。手順を知れば、手続きは意外と簡単だ。(画像は一部、東京都墨田区サイトより)

例えば、「介護スタート時」の自分たち(私やりんこさん)の右往左往ぶり。

私の場合は父が突然寝たきりになり、その対処に困ってSOSを出す形で介護の窓口に連絡し、介護が始まりました。でも、当初サービスの中心人物であるケアマネージャーがどのような役割をする人なのかということや、どんな介護サービスがあるのかということも知りませんでした。駆けつけたケアマネージャーの説明を聞き、少しずつその役割や仕組みを理解したというのが実情です。

りんこさんのお母さんの場合は転倒→骨折を繰り返した。しかし、寝たきりにはならず、なんとか自力で日常生活はできたそうです。ウチの父とは異なり、徐々に不自由になっていく状態。骨折治療の病院通いをする日々で、要介護認定を申請して介護サービスを受けるという発想はなかったそうです。そもそも介護保険制度自体、よくわかっていなかったといいます。

▼なぜ介護サービスをすぐ受けないのか

不思議に思われるかもしれませんが、「介護サービス」を受けるという発想にならない人は案外多いのです。骨折すれば病院に行って治療をする。治れば元の生活ができる。そう考えれば要介護認定を受けようとは考えない。介護は実際に自分の親など身内が、要介護状態にならなければ切実に考えないもの。「それまでは考えないようにしよう」と先送りしているのが、一般的な姿勢だと思います。

だから、いざ親などの身内が要介護状態になると、「え、まさか」「ど、どうしよう」と慌てるわけです。

介護はほとんどの人が素人。だから、その現実に直面すると慌て、右往左往することになります。そして、そうなった時、介護サービスの利用の仕方をわかりやすく導いてくれる完全なシステムはまだありません。