【田原】プログラムって何ですか?

【小島】いわば就農トレーニング場です。もともとはアルバイトで来てもらっていましたが、ホームレスの方は冬になると凍死しないように生き延びることが最優先となるため、バイトどころではなくなります。そこで寮を持っている支援団体さんから来てもらうようにしたのですが、今度は違う問題に直面しました。同じホームレスでも、路上生活の人と寮に住む人では精神面が大きく違います。前者は生き延びることが最優先で働く意欲も高いのですが、寮に住む人は衣食住が確保されているので、働くことへの意欲が低かったり、未来に希望を持てず、生きる気力すら失っていることが多い。それならば、まず農作業を通して働ける精神状態に戻すところから始めたほうがいいのではないかと考え、1回2時間、計10回の農業プログラムを提供する体制に変えました。

【田原】プログラムには何人くらいの方が通っているのですか。

【小島】いまは10人ぐらいです。

【田原】いま体験農園のほうは、どれくらいお客さんがいますか。

【小島】100家族で、400人くらいですかね。

【田原】体験農園の規模は大きくなったのに、ホームレス支援はプログラム化されて、仕事として平日の手伝いをするわけじゃなくなった。誰が平日の世話をしているのですか。

【小島】私ともう1人でやってます。

【田原】1800坪を2人でやるって大変でしょう?

【小島】そうでもないですよ。夏は朝4時から畑に出て日暮れまで働いていますが、肉体的な大変さはかえって清々しいくらいで、苦には感じません。むしろ厳しいのは精神的な部分ですね。ホームレスの方と話していて、みんなの闇の部分をもろに受けてしまうこともあるので。

【田原】闇の部分って?

【小島】ホームレスの方の中には、たとえば家庭環境のせいで小学校に行かせてもらえなかったり、子どものころから犯罪に巻き込まれていた人もいます。社会から居場所を与えられてこなかった人たちは、これからどうすれば居場所を見つけて幸せになれるのか。うまく言えませんが、そういうことを考えたときに、私もダメージをくらうというか……。簡単に答えが出せる問題ではないので、難しいです。