復興予算の調達に大きな問題は生じなかった

私も同意見である。ユーロはヨーロッパ統一という政治的スローガンを満たし、加盟国に利益をもたらすはずだったが、ギリシャは違った。ユーロから離脱し、独自通貨に戻して自身の中央銀行が通貨を発行するようになれば、景気を回復させることができる。そもそも、最初からユーロに加盟などすべきではなかった。

財政赤字一般の議論にもどろう。確かに、財政が悪化すると急な財政出動が必要になった場合に対応できないし、予算の多くが金利の支払いに消え、本来の支出に回せる額が減ってしまうという理屈は正しい。

しかし実際は、11年に東日本大震災が発生し、政府は総額25兆円もの多額の復興予算を計上したが、その調達に大きな問題は出なかった。国債の利払いについては、15年度予算で10.1兆円と、歳出全体の10%強に収まっており、アメリカ、イギリス、ドイツなど、世界の主要国のいずれよりも低い。

政府が過大な債務をチャラにしようとしてインフレを起こすのが、最も大きな心配である。悪性のインフレが発生すると、国民全部が課税される結果になる。しかし今の日本は長年、デフレに悩まされているので、その心配は少ない。

もちろん、永遠に歳出が歳入を上回る状態は望ましくない。いずれは消費税率を上げるなどして、財政を均衡させなくてはならないが、問題はそのタイミングにある。

この場合、景気を好転させ、日本経済を成長軌道に乗せてから税金を取るアベノミクスの立場と、EUがギリシャに押し付けているように、経済の状態とは関係なくまず税率を上げようとする立場の2つがある。どちらが正しいのだろうか。

“消費増税は景気に大きな影響ナシ”?(写真=時事通信社)

財務省は14年4月の消費税増税以前、「増税が実現すれば日本の財政への信認が高まり、国債発行金利も下がってくる」といっていたが、実際には上がってしまった。市場は「消費税率アップで景気が悪化すること」を重視したからだ。「消費税を上げても景気に大きな影響はない」などという強弁が嘘であることも、国民にわかってしまった。実際には消費税増税を機に景気が一気に冷え込み、14年は実質マイナス成長に転落してしまったからである。まさか財務省が、税収を下げてでも自らの権限拡大のために税率を上げようとしているとは思いたくないが。

消費税は今のところ、17年4月に10%に税率を上げることになっている。これを実施するときには、金融緩和の援軍も必要であろう。消費増税で一番苦しむのは低賃金、低所得、低年金生活者だ。生活必需品の税の免除とか、マイナンバー制を活用して生活困窮者に戻し税を支払うなどの所得分配上の配慮が必須であると考える。

(構成=久保田正志 撮影=石橋素幸 写真=時事通信社)
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