無口で人見知りこそ営業向きという驚きの事実
こんな美点を備えた内向型を日本企業はうまく活用できているだろうか。残念ながらNOだろう。内向型営業マンに、営業のやり方を教えるセミナーが好評というくらいだから。
主宰者はサイレントセールストレーナーを名乗る渡瀬謙である。幼少の頃から極度の人見知りで、小中高通じて「クラスで一番無口な性格」を貫いたが、大学卒業後、2社目の会社としてリクルートに転職、最初は苦労したものの、入社10カ月目で全社トップの成績を叩き出した。
「内向型は営業に向かないというのが世間の常識ですが、それは間違っています。営業は相手のニーズを探り出し、こちらが売りたいものを買ってもらい、お互いWIN-WINの関係を長期的に構築するという知的で緻密で難易度の高い仕事であり、思慮深く我慢強い内向型に最適な仕事といえます」
渡瀬の転機となったのは、リクルート時代の上司。口下手、無口、あがり症で社内のネアカな雰囲気にも馴染めず、成績も上がらずで、退職を決意しようしていた矢先、営業同行に行くかと声をかけてくれたのだ。
翌日の客先、いつも明るくてしゃべりもうまい上司の商談がひたすら暗い。笑顔もなく、ぼそぼそ声だ。「体の具合が悪いのかな。これじゃ売れないだろう」と思いきや、客がすぐに購入を決めてくれた。
「営業といっても、無理に明るくやらなくていい。相手のニーズを引き出し、それに応える商品や情報を提供するという営業の基本を自然体でやれば売れるのだ、ということを、上司が身をもって示してくれたのです。それからです、私が素のままでどんどん売れるようになったのは」