課題を解くためのPOINT1:仮説思考とは
データ収集の前に、まず仮説を立てよう

▼経験や勘を活かす4つのポイント

データはたくさん集めたけれど、何からどう手をつければよいかわからない。または、どのデータを集めればよいのかわからない。そんな人は少なくないと思います。

データ分析を行うとき、どんな課題にも共通して重要で有効なのが「仮説アプローチ」です。例題のように配達の遅れが問題になっているとき、誰でも最初に考えるのは「なぜ配達が遅れるのか?」でしょう。では、どうやってその原因を突き止めればよいのか。

「商品発送担当者に問い合わせる」「過去の配達記録を確認する」「配達ドライバーに問題がないか調べる」等々、いくつかの選択肢が思い浮かぶのではないでしょうか。こうした選択肢が思い浮かぶのは過去の経験や勘、常識などから「ここに問題があるかもしれない」と考えるからです。この思いつきが「仮説」と呼ばれるものです。

ただ、仮説はそのままでは思いつきにすぎず、その妥当性を検証する必要があります。そこで活用するのがデータを使った分析です。例えば商品発送担当者に原因があるかもしれないと思ったら、過去の配達記録と比較して問題を特定するなど、仮説に合わせて分析を進めていくのです。

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分析の手順をチャート化すると……

仮説アプローチを採るメリットは、無駄な分析を避け、かつ分析の目的が明確になること。そして大局的な視点でストーリーをつくりやすいことが挙げられます。その半面、仮説アプローチは最初から発想や視野が仮説の範囲を超えないため、それ以外の要素を見落とすリスクがあります。また、検証前の仮説は思いつきでしかなく、個人の主観にある程度頼らざるをえないので、その人の思い込みやバイアスに左右されるリスクもあります。こうしたリスクを回避するにはその存在を認識し、自分で意識してチェックする癖をつけることが大切です。

仮説アプローチを効果的に活かすためには、次の4ポイントが大切です。

(1)モレなくダブりなく
(2)現状の制約条件に囚われない
(3)複数の仮説を考えてみる
(4)最初から100点を狙わない

仮説を立てる範囲に抜けがあると大事な視点を見過ごしてしまったり、逆にダブりのある仮説を立てて無駄な分析に手間を取られてしまったりします。これらのリスクを最初の段階で潰そうというのが(1)の狙いです。

「手元にデータがない」といった目の前の制約条件を理由にそれらに関わる仮説を排除しないというのが(2)、問題の原因や機会の存在は1つだけだと思い込まないというのが(3)の趣旨です。(4)は最初から完全にこだわりすぎると発想の広がりや分析の効率を阻害する、という戒めです。