「相談料無料」はなぜ無料なのか

“タダより高いものはない”とは昔からある格言だが、大手生保、代理店を経て、現在は保険の有料相談、執筆、講演などを行っている後田亨さんは、「そこまで考えない人が多いことは現実が証明しています」と指摘する。「何時間相談にのっても保険が売れなければ1円にもならず、代理店が販売に執着するのは致し方ない」と阿野さん。

阿野さんはさまざまなジャンルの取材・執筆活動と保険代理店を兼業しており、収入の柱は複数あるが、通常の代理店は専業なので、必要かつ適切な保険だけを勧めてくれるとは必ずしも言い切れない。

ファイナンシャルプランナー(FP)の清水香さんは、「保険とは、家庭にどんなリスクがあり、どの程度の保障が必要かを整理したうえで加入すべきものですが、代理店では保険に加入することを前提として相談が進む可能性がないとはいい切れない。ビジネスとして代理店を構えているのだから売るなというのは酷で、消費者自身がそのことを理解する必要があります」と話す。

清水さんは保険の販売を行わない独立系のFPで、保険についての相談に応じる際には、家族構成や加入している社会保険の種類、勤務先の福利厚生などを整理し、必要な保障を合理的に確保する方法を提案するという。

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まず、「すでにある保障」を踏まえて考える

数千円の保険料で十分という例や、むしろ加入中の保険を減らしてもいいというケースもあるが、そういった助言ができるのは、顧客から相談料を受け取っているからこそ。「無料相談」では新たな保険に加入してくれなければビジネスが成り立たない。

保険会社から代理店に支払われる保険料は、両者の力関係や商品によって違う。時期によっては手数料割り増しになったり、実積次第で下がることも。

「中立、公正といっても、少しでも多くの手数料が発生するものを売りたいと思うのは致し方ない」(阿野さん)

FPは家計や将来設計についてアドバイスをする専門家だが、なかには保険を販売しているFPもいる。顧客の利益を優先し、中立公正な立場で助言を行うのが職務の条件であり、保険の販売とFPとでは利益が相反する部分があることも否めない。

特に、相談無料という場合は一定の注意が必要だろう。