もしも、私が社外取締役なら

顧問であれば、社内の生え抜き取締役ともうまく共存できるはずだ。逆に、肩書が顧問から取締役になると、生え抜きにとっては味方から潜在的な敵に変わるようなもので、無駄な緊張を強いられるから、百害あって一利なしだ。

社外取締役の役割が外部の視点からのアドバイスだというなら、取締役としてではなくアドバイザーとして雇うべきだという経営学の専門家もいるが、私もまったく同感だ。

たとえば、スズキの鈴木修会長兼社長は、スズキの経営理念を知り尽くした人物を社外取締役に起用してうまくやっている。しかし、それは東証が指針を導入した思惑とは必ずしも一致していないかもしれない。米国的なコーポレートガバナンスの枠組みに合わせつつも、以前からの日本的な経営をしたたかに守っているからの成功といえる。

今回の社外取締役制度については、多くの企業経営者は本音では嫌がっていると私は見ている。

日本のジャーナリストや評論家たちは、米国型のコーポレートガバナンスを尊ぶ傾向が強いが、実際の経営においては、ガラス張りにしてはいけないことがたくさんある。ガラス張りにしたら、ライバル企業や行政につけいられるだけだ。そして、忘れてはならないのは、アップル、グーグルなど米国企業とて経営をガラス張りなどにはしていない事実だ。理想と現実は違うのである。理想でしかないコーポレートガバナンスを実施させようという東証も、受け入れようとする企業もお人好しとしか言いようがない。

欠陥があることがわかっていながら、日本の企業は社外取締役制度から逃げられない。どうしても雇わなければならないなら、次の2つの条件を満たす人物を選ぶべきだ。

1、経営方針には無関心。
2、人脈、知見を惜しげもなく紹介する。

私が、社外取締役になったら、この2つに加えて「組織のグレーゾーンを処理する」ということになるだろうか。

(写真=時事通信フォト)
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