昔、ジャパネットのラジオショッピングが好調だったとき、ラジオ聴取者は5%程度と知り、残る95%の人に伝わっていないことに気づいてテレビに進出しました。テレビやラジオでお年寄りがあまり買っていないことがわかり、新聞チラシも使うようになりました。他社よりスピードを上げたいと考え、自社スタジオで番組を制作するようになりました。進化しようと思えば課題が見えてくるんです。その積み重ねが「今」です。過去の成功体験は捨て去ることです。
今、ジャパネットの業績が伸びていますが、好調なときは危機。時代は常に変化していて、課題も次々に出てくる。
データ一辺倒も課題を見えにくくします。100個売れていた商品が1000個に伸びたらデータ的には期待が持てそうですが、実は単にインフルエンザ特需で売れただけの「まぐれ当たり」かもしれない。一方、今は3個しか売れていないけれど大ヒットの可能性を秘めた商品もあるんです。それを見極める力もまた、目の前の課題を解決しながら試行錯誤で身につけていくものです。
今の課題をコツコツこなしていけば、語学学習のように、いつか大きく飛躍する瞬間が訪れます。そこまで根気強く努力を続け、夢を持ち続けられるかどうかが成功するか、しないかの分かれ道です。私はいつも課題に挑んでいますが、それをきついとは思いません。そういう生き方を自分の行動パターンにしているからです。前向きならば、決して苦痛ではないのです。
(10年1月18日号当時・社長構成=斉藤栄一郎)
小宮一慶氏が分析・解説
インターネット社会が、考える力、見抜く力を弱めてはいないだろうか……。グーグルやヤフーなどの検索エンジンは確かに便利だ。
パソコンにキーワードを打ち込めば、答えがすぐに見つかる。そこでは「考える」「探す」という努力をほとんど必要としない。
しかし、これは危険なことだと思う。便利すぎて論理的な思考をしなくてもすんでしまうからだ。
だから高田氏がデータ一辺倒を排し、物事の本質を見極める力を強調するのは当然だろう。その高田氏の「今の課題をコツコツこなしていけば、語学学習のように、いつか大きく飛躍する瞬間が訪れます」という言葉は、ウェブ社会の恩恵をフルに受けてきた若手ビジネスマンに、戒めの言葉としてぜひ胸に刻み込んでおいてもらいたいものである。
最後に一つアドバイスしたい。どんな小さなひらめきでもいいから、アウトプットしたものを人に伝えて評価してもらおう。辛辣な意見が返ってきたら、その意見の本質がどこにあるのかを検証する。その繰り返しによって頭の引き出しがさらに整理され、論理的思考力のアップとともに、本質を見抜く力も向上していくはずだ。
1957年、大阪府生まれ。京都大学卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。96年に小宮コンサルタンツを設立し、現職。『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』など著書多数。