変化の兆しを読む現在と過去の照合

イノベーションを生み出すために重要なのは、突然何かを思いつくことではなく、変化の兆しに気づくことです。そのためには他社のサービスを研究するよりも、やはりユーザーの声に耳を傾けるのが第一。グーグルはヤフーを研究し尽くした結果、検索エンジンを始めたわけではないでしょう。多くの人たちに受け入れられるイノベーションが生まれるのは、常にユーザーの求めるものが何なのかを考えた結果です。

グリー会長兼社長 田中良和氏

ただし、ユーザーの声に耳を傾ける姿勢とは、その声をそのままサービスに反映させていくことだけを意味しない。むしろ、「現在」の生の情報である「声」を、その業界・分野の「過去」の歴史と照らし合わせていく作業が大事なのです。例えば、現在のモバイルサービスを始める以前、PCよりも携帯電話を中心に利用しているユーザーの声を集めると、「パソコンは起動に時間がかかる」「寝ながらできない」「画面が大きすぎる」といったものが次々に出てきました。同じころ、ゲーム業界ではニンテンドーDSやPSPが流行し、家庭用ゲーム機全盛の時代が終わりを迎えようとしているかに私には見えました。ゲームは家でやるものとか、大きな画面でプレーしたいという「常識」が変わり始めていたのです。

(小宮一慶=総括、分析・解説)
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