25歳は、若くない

浅田選手はこの9月で25歳となる。フィギュアスケート選手としては決して若くはない。20歳を過ぎると、どうしても徐々に脂肪が付き始めて体形が変化していく。柔軟性やジャンプ力は落ちていく。スタミナも落ち、疲労の回復も遅くなっていくため、より「コンディショニング」が大事となる。

浅田選手の武器は、3回転半ジャンプの「トリプルアクセル」に代表されるジャンプである。スケーティング技術の正確さを追求するにしても、ジャンプの難度を挙げるのは難しくなる。ここは円熟味を出す「大人の演技」を加えていくことになろう。

フィギュアスケートは表現スポーツゆえ、2006年トリノ五輪金メダルの荒川静香さんのごとく、観客に訴える表現力を磨いていくのである。ジャンプの浅田選手から、ジャンプ&表現力の浅田選手とイメージチェンジが図られるかもしれない。

一番コワいのは故障である。また勝負という観点からみれば、伸び盛りの若手選手とどうやって差別化していくのか、戦略的な戦いもポイントとなる。

いずれにしろ、自分を追い込んでいく練習が待っている。圧倒的な努力が必要となる。過酷であれ、ここは自分で選んだ道である。納得がいくまでチャレンジするしかあるまい。「イケる」と確信した時、平昌五輪というコトバが口から出ることになる。

復活の道筋はといえば、アイスショーなどをしながらスケート感覚を取り戻し、年末の全日本選手権に出場することになるだろう。あるいは、10月からのグランプリシリーズに挑戦することになるかもしれない。

人気は絶大、子どもからご年配の方まで、「真央ちゃん、がんばれ!」「真央ちゃん、がんばれ!」である。浅田選手が平昌五輪の金メダルに届くかどうかはともかく、ぼくらは氷上で頑張る真央ちゃんの姿に声援を送るしかあるまい。

松瀬 学(まつせ・まなぶ)●ノンフィクションライター。1960年、長崎県生まれ。早稲田大学ではラグビー部に所属。83年、同大卒業後、共同通信社に入社。運動部記者として、プロ野球、大相撲、オリンピックなどの取材を担当。96年から4年間はニューヨーク勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。日本文藝家協会会員。著書に『汚れた金メダル』(文藝春秋)、『なぜ東京五輪招致は成功したのか?』(扶桑社新書)、『一流コーチのコトバ』(プレジデント社)など多数。2015年春より、早稲田大学大学院に進学予定。
(AFLO=写真)
【関連記事】
本田圭佑、田中将大、浅田真央……世界と戦うトップアスリートの熱き叫び
「この3年間の積み重ねが生きている」-浅田真央
仕事で先が見えないときの踏ん張り方
「五輪チャンピオンという肩書きを背負っていけるぐらい強い人になりたい」-羽生結弦
オリンピック選手に学ぶやり遂げる力