一夜にして600億円の興行収入

アメリカのスポーツビジネスはスケールがでかい。先のボクシングの「世紀の一戦」、フロイド・メイウェザー(米国)×マニー・パッキャオ(フィリピン)の総興行収益は、5億ドル(約600億円)を超えたといわれている。たった1日で……。

収益でサッカーJ1トップの浦和レッズの年間収益(約58億円=13年度)のざっと10倍である。もうスポーツで飛び交う巨額マネーは日本とは桁が違う。何が違うのか。

「アメリカ独自のシステムゆえでしょう」と、スポーツビジネスの専門家は解説する。「テレビの放送権料やペイ・パー・ビュー(PPV)が試合の商品価値をイッキに大きくしたんですよ。視聴者がテレビ観戦にカネをあまり出さない日本ではありえません」

今回、米ケーブルテレビ大手の試合の生中継の権利はHBOとショータイム両社が獲得し、視聴ごとに課金されるPPVの価格は通常89.95ドル(約1万800円)に設定された。PPV購入件数は過去最高の440万件に達し、4億ドル(約480億円)を売り上げたそうだ。

アメリカのスポーツビジネス史を紐解くと、ボクシングがリードしてきた。初のテレビ中継が1939年のマックス・ベア対ルー・ノバ戦(ニューヨーク・ヤンキースタジアム)。やがて放送権料が支払われるようになり、モハメド・アリ(カシアス・クレイ)が64年に世界ヘビー級王者となると、その人気でアメリカのテレビ・ボクシングは一層、マネーが動くようになった。

『テレビスポーツ50年』(杉山茂著・角川インタラクティブ・メディア)によると、74年10月、中央アフリカのザイール(現コンゴ民主共和国)のキンシャサで行われた「アリ対ジョージ・フォアマン」は世界60カ国に中継され、放送権料収入が3000万ドルにのぼったという。

翌年の75年10月のアリ対ジョー・フレージャー戦で初めてPPV中継が行われた。その後、シュガー・レイ・レナードやトーマス・ハーンズ、マービン・ハグラー、ロベルト・デュラン、マイク・タイソン、オスカー・デ・ラ・ホーヤらの活躍でPPV放送が躍進し、収入も急激に膨らんでいった。