「高齢者難民」が発生。東京はスラム化する
劣化の第一は、東京の「スラム化」である。人口減少高齢社会では、経済成長率が低下する。さらに働いて貯蓄できる人の比率も下がるため、貯蓄率も大幅に低下する。このような局面では、道路や上下水道といった公共インフラを計画的に整理縮小する必要がある。
ところが東京では人口の減少が小幅にとどまるため、大胆な整理縮小ができない。それどころか2020年の東京オリンピックに関連して、インフラの新規投資が膨張している。今後は既存インフラの維持や更新すら困難になるのに、貯蓄を使い果たそうとしている。
大量の「高齢者難民」が発生する可能性も高い。東京の高齢者の約4割は借家住まいだ。近い将来、年金制度が事実上破綻し、給付水準が引き下げられれば、家賃が払えなくなった高齢者が街にあふれ出す。
経済成長が衰えれば、民間によるインフラ整備も期待できなくなる。再開発は行われなくなり、老朽化した商業ビルは、取り壊されず廃墟になる。また鉄道の沿線人口が減れば、路線は廃止・短縮される。鉄道が来なくなれば郊外の住宅地は価値を失い、ゴーストタウンになるだろう。
経済成長を上向かせるには、東京の経済を国際化・高度化する必要があるが、それでも大量の失業が発生するだろう。1950年代後半から70年代初頭に東京へ流入した第一波は、製造業に組み込まれ、熟練労働者に成長した。しかし80年代や2000年以降に流入した第二波、第三波は、流通業などに就いた人が多く、高度なスキルを持つ人は少ない。これは政府と企業、そして労働者自身が、職業教育を軽視し、安価な労働力を追い求めたツケでもある。