結婚するかしないか、子どもを何人持つかという選択は、人々の価値観によるものだ。2013年時点の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子供の平均数)は1.43だった(※)。人口維持には2.07まで引き上げる必要がある。しかし女性の生涯未婚率は30年以上前から上昇を続けており、試算では2040年には30%近くに達する。一方、既婚女性(有配偶女性)の合計特殊出生率は40年以上、2.0+αで安定している。つまり女性が子どもを産まなくなったわけではなく、結婚をしない女性や子どもを持たないと決めた女性が増えているのだ。政府の目標を達成するには、既婚女性が平均で3人程度を産む必要がある。それは非現実的であり、非民主的だ。
こうした人口の変化で深刻な影響を受けるのは地方ではなく大都市である。地方の高齢化は既にピークを過ぎており、今後、人口変動は落ち着く。一部で議論されている「地方の消滅」は杞憂に過ぎない。
これから東京などの大都市では、「人口がたいして減らない」「これまで大量に流入した若者が歳を取り、高齢者が急増する」「全国的な少子化で流入する若者が激減する」という三重苦が始まる。人口が減らないため、行政サービスや公共インフラへの需要は減らない。そこで高齢者が急増すれば、医療や介護への負担で財政支出が急激に膨張する。さらに流入する若者の激減で納税者は減り、税収は低迷する。大都市は未曾有の財政難に陥る。
特に東京の高齢化の規模はあまりにも巨大だ。社人研によると、10年時点で、東京都の65歳以上の高齢者は約268万人。これが40年には約144万人増え、約412万人となる。増加率は53.7%に達する。この結果、これから首都東京の「劣化」が起きると予想される。