人はどのような時に争うのか?
【高城】派閥のメリットに、人の面倒を見るという点もあります。会社の中で派閥がなくなったら人材が育たないというケースも少なくありません。派閥の長が下の人間を育てたりと、人材教育システム以外で機能しているケースがあります。派閥によって会社の中に足りないシステムが機能する……。
だから派閥のメリットも考えたうえで、「主義主張は言うけれど、でもその話が終わったらノーサイド」とルールを決めておけばいい。そうすれば、会議でヒートアップして揉めても、終わった後、飲みに行ったら普通の関係に戻れる。
【齊藤】確かにヒートアップすると、それを変に引きずる人がいます。ノーサイドになっても感情的にまとまれないわけで、それが対立になってしまい、飲みに行こうって言っても解決できないタイプもいます。
ただ、人間誰もが弱いわけで、どこかに所属していないと不安なんです。所属欲求が根底にある。マズロー風にいえば、生理的な欲求とか安全欲求の次にくるものが所属欲求で、どこかに所属しているという安心感。自分が弱いときには助けてくれるそういう集団に属している安心感というものは、非常に強い。所属できる集団=派閥の有無は、その人の会社での行動に大きな影響を及ぼすことが多いのです。
【高城】「派閥=主義主張とか考え方が全部同じ集団」と考えないことですね。
【齊藤】その通りです。
【高城】優秀でも孤立する人にならないためには、孤立に耐えられるのだったら派閥に入らないという選択肢もあるけれど、でも結局、会社とはチームで仕事をする組織なので、自分の立ち位置を明確にすることが大切です。つまり、自分の立ち位置じゃないことは言わない、ということ。何でもかんでも口挟んでいく人がいますが、そうではなく、自分の立ち位置を明確にしていくことが重要です。
※本連載は書籍『なぜ、嫌われ者だけが出世するのか?』(齊藤 勇 著)からの抜粋です。
高城幸司(たかぎ・こうじ)●セレブレイン代表。1964年生まれ。同志社大学卒業後、リクルート入社。リクルートで六期連続トップセールスに輝き、「伝説のトップセールスマン」として社内外から注目される。その後、情報誌『アントレ』の立ち上げに携わり、事業部長、編集長、転職事業の事業部長などを歴任。2005年、リクルートを退社し、人事戦略コンサルティング会社「セレブレイン」を創業。企業の人事評価制度の構築・人材育成・人材紹介などの事業を展開している。『「課長」から始める 社内政治の教科書』(ダイヤモンド社)がベストセラーとなり話題になる。Twitterのアカウントは @koji1021。「高城幸司の社長ブログ」 http://blog.goo.ne.jp/k-takagi001021
齊藤 勇(さいとう・いさむ)●対人心理学者、文学博士。1943年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。立正大学名誉教授、大阪経済大学客員教授、日本ビジネス心理学会会長。とくに人間関係の心理学として、対人感情の心理、自己呈示の心理などを研究。TV番組「それいけ!ココロジー」に出演し監修者を務めるなど、心理学ブームの火つけ役となった。『心理分析ができる本』(三笠書房)など、編・著書・監修多数。企業社会などで起こる「人間の足の引っ張り合い」や「いじめ」に関して、社会心理学者としてユニークでわかりやすい論陣を張る。