もはや逆転出世の可能性がない中高年諸君よ、ここで腐ってはいけない。上手に定年までぶら下がる方法を伝授しよう。
サラリーマンなら誰しも花形部署にいたいと思うし、その部署で出世しそうだと思う上司のご機嫌をとりながら保守本流にいたいと思うだろう。部長やその上の役員に忠節を尽くすことに労力を割き、その結果、出世が早まることは今の時代にもある。
しかし、そのリスクは大きいと語るのは合併劇を経験したIT関連企業の人事部長だ。
「うちは事実上吸収されたほうだが、合併で大幅な役員交代が実施された。将来の社長候補と目された役員が子会社に異動した結果、取り巻きの部長、課長たちも子会社に飛ばされて次々と失脚していった」
吸収した側の企業は合併後の人事の障害となる派閥を真っ先に狙い打ちにする。合併に限らず今は業績不振に陥ったり、ビジネスモデルが変われば派閥のトップが外され、ぶら下がっていた幹部も失脚していく時代だ。
「上司を選ぶ生き方はリスクが大きいと思う」と語る人事部長自身は派閥に属していなかったが、それでも合併後に降格された。だが、与えられたミッションに全力を尽くすことで、今の地位に返り咲いたのだという。そんな彼は、定年まで生き延びていくうえで大事なのは「社内での生々しい人脈づくりよりも、利害を超えた社外での人脈をつくることだ」とアドバイスする。
人事部長は若いときから異業種の勉強会に積極的に参加していたという。
「そこでのつきあいを通じて会社や自分の能力レベルがどのくらいなのかを知ることができる。また、合併後の人事制度の設計で困っていたときに、他社の人から内部資料を見せてもらい、助かったこともある。人間関係を通じて仕事の幅も大きくなる」
同じように社外人脈の大切さを指摘するのは食品会社の人事部長だ。誰もが出世したくてギラギラしている40代のときに、出世に関心がなく、社外の様々な勉強会やボランティアなどの活動に精を出していた営業の人がいたという。
「彼はいくつもの団体で幹事を引き受けていたので社外での人望も高かったが、とにかく人脈がすごい。彼を通じて研修の講師を紹介してもらったこともあるが、部署でも重宝がられていたようだ。結局、出世はしなかったが社外からもかなり転職の誘いがあったと聞いている。もちろん、そんな人物は会社としても手放したくはない」
一芸が身を助けるではないが、社外人脈の豊富さが社内での生き残りにも直結する。