4月に入社する新人の給与は大手企業を中心にアップする一方、さほど上がらない中堅世代には不満が充満している。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「企業は人件費を抑制するため、ジョブ型賃金(職務給)の導入を一気に進めて、世代を超えた管理職入れ替え戦が日常化している」という――。
「正直頭にきています。ビシバシ鍛えてやりますよ」
大手企業を中心に初任給が大幅に引き上げられる一方で、それほど上がらない中堅・ミドル層の反発や不満も発生している。
自社の社宅などの工事を発注している担当者は、初任給を大幅に引き上げた発注先の建設会社の担当者に「お宅の会社、相当儲かっているんですね」と皮肉っぽく言った。建設会社の30代の担当者はこう返したという。
「初任給引き上げの恩恵を受けているのは新卒と20代だけですよ。僕らはわずかしか上がっていませんし、こんなに新人を優遇するなんて正直頭にきています。入社したら給料分働いてもらうために、ビシバシ鍛えてやりますよ」
こうした反発はどこの企業でも見られる現象かもしれない。しかし20代の賃上げ率に応じて全体の給与を引き上げれば人件費の増大は避けられない。
そうした中で中期的に人件費の抑制を図る仕組みとして、従来の年功型賃金からジョブ型賃金に移行する企業が徐々に増えている。
ジョブ型賃金は職務給と呼ばれ、欧米の主流の賃金制度だが、給与は担当する職務(ポスト)ごとに決まる「仕事基準」であり、職務が変わらない限り、賃金も固定されて変わらない「脱年功型」賃金でもある。
給与を増やすには自ら高いポストに必要なスキル修得が求められる一方、逆にポストの職責を果たしていないと見なされると降格も発生する仕組みだ。企業にとっては年功的昇給額を抑制でき、ポスト(職務)の増減によって中期的に人件費を固定費から変動費化できるメリットもある。
さらに優秀な若手の抜擢もできるだけではなく、新卒や中途採用においても能力に見合った高い報酬も提示できる。