イメージは一面的であってはならない

実は本書は、13年に出版されて反響を呼んだ『在中日本人108人のそれでも私たちが中国に住む理由』(阪急コミュニケーションズ、現CCCメディアハウス)と対になる本として生まれた。同書は12年の激しい反日デモを現地で体験した日本人が見た中国の姿、中国人の本音をまとめた証言集。これを読むと、中国全土が反日一色に染まっているわけではないことが理解できる。

普通に考えたら、当たり前だ。日本のヘイトスピーチだって、全国そこらじゅうでやっているわけではない。イメージというのは怖い。いったん固定化すると、なかなか崩しにくい。同書の序文に「ある一国に対するイメージは、一面的であってはならない」とある。中国は、韓国は、ロシアは……、陥りやすいだけに、気をつけなければと思う。

とまあ、そんなに大上段に構えることなく、世の中にはさまざまな生き方、人生があることを知る上でも本書はおもしろい(といっては語弊があるかもしれないが)。ある男性料理人は運悪く不法滞在者の身になりながらも、中国に住む娘の夢、米国に留学して医者になりたいという願いを15年間働き続けてみごとかなえさせた。日本人と結婚したものの子育てでノイローゼになり、子どもとの無理心中まで思いつめた女性は、その後立ち直り、同じ悩みを抱える女性を支援しようと保育園経営者になった。

まえがきで訳者は「どの人物からもうかがえるのは、異郷にあってどんな不遇にみまわれたとしても決してあきらめることのない不屈の精神、旺盛なチャレンジ精神、あくなき向上心、そしてそれらを支えるかのようなマイペースな楽観主義(プラス思考)」と書いているが、まさにその通りで、学ぶ点は多い。

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