野球解説者 藪 恵壹さん

1968年、三重県出身。東京経済大学卒業後、朝日生命入社。営業をしながら硬式野球部でプレー。93年、ドラフト1位で投手として阪神タイガースに入団。2003年には18年ぶりのリーグ優勝に貢献する。04年にFA資格取得後、05年にメジャーへ。オークランド・アスレチックス、コロラド・ロッキーズほか、マイナーリーグも経験。10年に入団した東北楽天ゴールデンイーグルスを最後に現役引退。11年から13年まで阪神タイガースコーチを務める。現在は毎日放送・MBSラジオのプロ野球解説など、メディアで活躍中。


 

食べ物で一番、好きなのはごはんですね。三重県の郷里では両親がお米をつくっていて、小学生のときから田植えや稲刈りを手伝っていた。そんな環境に育ったから、ごはん好きになったのだと思います。

お米は現役時代のパワー源で、メジャーでプレーしているときにも欠かさず食べていました。キャンプではごはんだけを容器に詰めて、練習場に持っていく。球団が用意した朝食のスクランブルエッグやベーコンをおかずにごはんを頬張っていました。

辛かったのは、1990年代の阪神タイガース時代。試合前に食事を出してくれるんですが、なぜかうどんや蕎麦ばかりで。6回ぐらいにはお腹が空いてグーグー鳴り出すんです。で、スタミナ切れで7回あたりにつかまる。当時、阪神が弱かったのは、お米を食べさせなかったからですよ(笑)。

ごはんがおいしい店として、筆頭に挙げたいのは「むら田」です。3人前は軽く食べられます。「畑中」は天ぷらはもちろん、コースの締めの天丼が楽しみなんです。

僕は外で食事をするときには、必ず、3軒ぐらい行く店を決めておく。最初の店が休みや満席でも、ほかに候補があれば慌てずに済むじゃないですか。

この習慣は野球で身につけたもの。試合中は次の展開を読みながら瞬時に判断するという場面の連続ですが、同時にうまくいかなかったときの対処法も考えないといけない。たとえば、外野手がフライを落としたらどう動くとか、バックアッププランを立てる能力も求められるんです。

ただ、自分の野球人生に計画性があったかというと、正直、そうでもない。プロの道は保険会社で営業しながら野球を続けるうちに見えてきたし、大リーガーになりたいなんて思ってもいなかった。メジャーに挑戦する気になったのは、阪神がリーグ優勝して達成感が得られたのと、自分の力が落ちてきている実感があったから。また、球団が世代交代の時期になっていたなど、いろいろなことが重なって自然と実現したんです。

向こうでは厳しい状況も多かったけれど、結果としては行ってよかったですね。球の重さやマウンドの硬さの違い、選手の管理法の差などメジャー経験者にしかわからないことは多いんです。それを後輩に伝えつつ、日本のプロ野球に貢献できればと。そしていつかは、12枠しかない監督も経験してみたいですね。