デキの悪い上司に見せる演技は必要か?

【高城】実際に出世した人はプライドが高い傾向にある。人より高い立場にいるということは、できる人間でありたいと思うので、ミスを認めたくないし、自分の非のあるところを隠そうとする。苦手なことがあったとしたらやらないとか……。でも実は、周りはわかっていて、すべてに万能で何でもできる人なんていないわけです。だから「上司もそれなりに苦労している、仕事をしていろいろ悩みもあるんだ」という部分を少し見せることが必要です。

たとえば私の知り合いの社長で、社員が辞めたときに泣く人がいます。断腸の思いで辞めて悲しいとワンワン泣くのですが、それは演技。本当は思っていないけれど泣きを見せる。そういった感情の起伏などが見えると、その気持ちが共感を生むんですね。経営者との距離が近づいて、嫌われることは減りやすくなる。

【齊藤】人間味ですね。そういった部分、日本人は好きですよね。

【高城】確かに好きです。

【齊藤】パーフェクトな人ではなく人間味がある人でないと好きになれない。自分も社長も実は同じだと思っているから、「やっぱり社長でも弱みがあるんだ」と同感できないと安心できない。多少の演技力、つまりはコミュニケーション力によって相手の心に近づく。

共感や同情を呼んで、「なんだ、自分のほうが上なんだ」という気持ちを持たせる。人間関係で「自分が下」であると、精神的に疲れたり嫌になったりしがち。それよりも自分よりデキの悪い人と一緒いたいという気持ちが強く働きます。「あの人には実は欠点がある」という人が、日本の企業では「人間味のある」上司・経営者となる。これは出世したときに嫌われない重要なポイントです。

【高城】その中でも許容範囲を決めている人は重要です。たとえば人間味があるといっても、毎日飲みに行って、朝真っ赤な顔をして出社するとなると、人間味どころではなく駄目な人になってしまう。そうではなく、数字に強い優秀な人でも、「実はプライベートでは鉄ちゃんで、ストレス発散で汽車を見に行く」とか「甘いものが好きで、週末は羊羹食べるために川越まで行く」というように、共感する部分が多くの人の許容範囲の中に収まっていることが重要です。「趣味でゴルフ場買っちゃった」「毎週末クルーザーに」とか言われると、なかなか共感してもらいにくい。

【齊藤】レイヤーどころか、「人生も違う」と思われてしまいますね。

【高城】周りの人が見たときに共感性を持てる振れ幅があることが大事です。この振れ幅が大きかったり小さかったりしすぎると、下世話な人に思われてしまいます。

※本連載は書籍『なぜ、嫌われ者だけが出世するのか?』(齊藤 勇 著)からの抜粋です。

高城幸司(たかぎ・こうじ)●セレブレイン代表。1964年生まれ。同志社大学卒業後、リクルート入社。リクルートで六期連続トップセールスに輝き、「伝説のトップセールスマン」として社内外から注目される。その後、情報誌『アントレ』の立ち上げに携わり、事業部長、編集長、転職事業の事業部長などを歴任。2005年、リクルートを退社し、人事戦略コンサルティング会社「セレブレイン」を創業。企業の人事評価制度の構築・人材育成・人材紹介などの事業を展開している。『「課長」から始める 社内政治の教科書』(ダイヤモンド社)がベストセラーとなり話題になる。Twitterのアカウントは @koji1021。「高城幸司の社長ブログ」 http://blog.goo.ne.jp/k-takagi001021
 

 

齊藤 勇(さいとう・いさむ)●対人心理学者、文学博士。1943年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。立正大学名誉教授、大阪経済大学客員教授、日本ビジネス心理学会会長。とくに人間関係の心理学として、対人感情の心理、自己呈示の心理などを研究。TV番組「それいけ!ココロジー」に出演し監修者を務めるなど、心理学ブームの火つけ役となった。『心理分析ができる本』(三笠書房)など、編・著書・監修多数。企業社会などで起こる「人間の足の引っ張り合い」や「いじめ」に関して、社会心理学者としてユニークでわかりやすい論陣を張る。

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(高城幸司、齊藤 勇=談 撮影=飯貝拓司)