正反対の上司とうまくやるコツは

●解説者:小杉 俊哉

うちの上司は頭が固い、すぐ保身に走る、長期的視野に欠ける……。アフター5の話題の定番といえば上司の悪口だ。しかし、独立しない限り上司はいなくならない。そこで苦手な上司とどう接すべきか、私が実践したとっておきの方法を伝授しよう。

ユニデンという会社で2年間働いたことがある。2年目、人事総務部の責任者として、外部から招かれた新社長の下で仕事をすることになった。彼は私と正反対のタイプだった。私は計画を立てるのが苦手で思いつきで動くのが好き、直感重視型であるのに対して、彼は計画ありきでデータ重視。地獄の日々が始まった。私が自分のやり方に固執すると叱責され、1日何度も電話で呼び出されては怒鳴られた。電話が鳴るたび恐怖感から毛穴が開くようになり、まずいと思うようになった。どうするか。これまでの自分を封印し、その社長のやり方に染まることにした。

まず社長のことを客観的に見てみた。すると彼のやり方は、これはこれですばらしいと思えた。社長をよく知る部下や秘書にも教えを請うた。こういう場合は社長がどんな判断を下すか先回りして考え、手も打った。5カ月くらい経つと、症状も収まり怒られることもなくなった。そして社長からこう言われた。「ようやくわかったか」と。その瞬間へなへなと力が抜け、「次の会社に行こう」と決意したのである。

先日、ユニデンの退職者が集まる会に足を運んだ。旧知の人が「小杉はなぜ2年で辞めたんだ」と半分酔って絡んできた。すると、出席していた元社長が遠くの席から制してくれた。「おまえは小杉が当時、どれだけ大変だったか知らないのか」と。それを聞いて涙が出た。このときにわかった。この人は私を育てようとしていたんだ、と。おかげで仕事の幅が広がり、感覚仕事ときっちり仕事、どちらもこなせるようになった。感謝の念に堪えない。

熊平 美香(くまひら・みか)
ハーバード大学大学院修了(MBA)。
熊平製作所、藤田商店等を経て、一般財団法人クマヒラセキュリティ財団代表理事。

 

小杉 俊哉(こすぎ・としや)
MITスローン経営大学院修了。
NEC、マッキンゼー、アップル等を経て、THS経営組織研究所代表。著書に『起業家のように企業で働く』。

 
(構成=荻野進介 撮影=向井 渉)
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