英語ができる人ほど脳を働かせない

図上:英語熟達度の低い大学生の脳 図下:英語熟達度の高い大学生の脳(図=酒井教授提供)

いま紹介してきた効果的なやり方で勉強すれば、はたしてどれくらいで自分の脳を英語にチューンナップできるのだろうか。それを考えるには、まず“省エネ脳”について説明する必要がある。

世間一般に、脳が活性化するほど頭はうまく働いている、というイメージがあるかもしれない。しかし、そのイメージは必ずしも正しくない。

脳には、言語の基本的な処理をする「文法」「読解」「単語」「音韻」の4つの部位がある。英語の熟達度の低い学生に英語の文法問題を解かせたところ、「文法」の部位を中心に他の部位の活動も活発になった(図上)。しかし、熟達度の高い学生に同じ問題を解かせると、「文法」の部位がわずかに活動しただけだった(図下)。これは、英語力がある人ほど、脳をあまり使わなくても英語を処理できるようになったということ。つまり、脳は“省エネ運転”をするようになるわけだ。

「意識することなく自然に英語を読んで話せる省エネ脳に切り替わるまでに、およそ6年かかるということがわかってきました。一方、母語から遠い外国語を仕事で使えるくらいにまで読めて話せるようになるには、2200時間の学習が必要だというデータがあります」

短期間の勉強で英語脳に切り替わらないことはたしかだ。とすると、継続的に勉強するために、モチベーションを保つ工夫も必要になるだろう。最後に酒井先生は次のようにアドバイスしてくれた。

「ミステリ好きの人は海外ミステリの原書を読む、ゴルフが好きな人は英語のゴルフ中継を見るというように、自分の好きなものを教材にすると続けやすいのではないでしょうか。ただ、そもそも続けることにこだわりすぎないほうがいいと思います。伸び悩んだら、一息入れることも大事です。行き詰まっているときは、時間を取って寝かせたほうが脳も情報を整理できます。勉強に行き詰まっても、それを挫折と考えず、気楽に構えてほしいですね」

(構成=村上 敬 撮影=和田佳久)
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