では、どのような学習をすると新たに英語脳をつくれるのだろうか。
まずは単語の学習について。電車の中で単語帳をめくりながら、覚えているかどうかを頭の中でチェックしている人をよく見かけるが、このやり方ではかえって忘れやすい。
「脳に何かを記憶させるには、できるだけ手がかりが多いほうがよいのです。単語を覚えるよりも文全体を丸ごと覚え、音で聴いたり、声に出したり、あるいは手で書くなどして、さまざまな形でインプットしたほうが脳への定着がよくなり、記憶を引き出すときも容易になります」
記憶を定着させるためには、ツールも慎重に選択したい。最近は持ち運びに便利な電子辞書やスマホアプリを使う人が増えてきた。しかし脳科学の観点からは、紙の辞書も持っておいたほうがいい。
理由は2つある。一つは、前述の“手がかり”が増えるからだ。紙の辞書で引けば、「この辞書の真ん中あたりのページの右上にあった」という物理的な位置情報が記憶され、それが思い出すための“手がかり”になる。線を引けば、その動作も手がかりの一つになる。一方、少ない動作で目当ての単語にたどり着ける電子辞書は、便利な半面、記憶の手がかりが少ない。
また、電子辞書は一覧性が低いこともデメリットだという。
「辞書で“take”を引くと、つかむ、場所を占める、食べるなど、さまざまな語義やその用例が出てきます。このように日本語と英語の関係は『多対多』で非常に複雑ですが、一覧性のある紙の辞書ならたくさんの語義や用例が自然と目に入り、辞書を引くたびにさまざまな言語の特徴が脳に蓄積していきます」