文法とリスニングで犯しやすい“間違い”

続いて文法の学習はどうか。文法は参考書などで規則を覚えるのが普通の勉強法だが、酒井先生はこのやり方だけでは不十分だと話す。

「私たちは言語の法則性を単純化して整理して覚えれば、効率よくマスターできると思いがちです。しかし参考書に載っている文法は氷山の一角に過ぎず、それらを覚えても英語を使いこなせるようになるのは難しいのです」

わかりやすい例は“a”と“the”の使い方だろう。一般的に、“a”は単数で数えられるもの、“the”は特定のものや既知のものを指すときにつけると教えられる。しかし、実際にはそれですべて説明できるわけではない。

「たとえば脳の場所などの解剖用語は、既知かどうかにかかわらず、基本的にtheをつけなくてはいけませんが、そういう細かいルールは文法書にはあまり書かれていません。言語というのは文法のレベルでは捉えきれない、きわめて奥深い自然法則に満ち溢れているのです」

では、文法書に書かれていない“文法”を身につけるには、どうすればいいのか。

「長文や会話の中で、その状況を含めて丸ごと覚えるといいでしょう。昔からよく言われることですが、『習うより慣れろ』が一番です」

リスニングにも、脳科学的におすすめできない勉強法がある。英文を見ず、音だけをわかるまで繰り返し聴くやり方だ。

「脳が英語として理解できない音を繰り返し聴いても、途中からそれを理解し始めることはほとんどありません。日本語とは全く異なる音声の連なりとして聴けなければ、リスニングの上達を妨げるおそれがあるので要注意です。脳は、繰り返された情報は大切なものだと勝手に認識する性質を持っています。そのため聴き取れない音のままで繰り返し聴くと、それが間違ったまま定着してしまい、かえって正しく聴き取ることが難しくなります」

聴き取れないものを背伸びして聴くのが危険だとすると、リスニング力がおぼつかないのにCNNやBBCなど海外ニュースを聴き流すだけでは効果が薄いということになる。それよりも、きちんと聴き取れるものを繰り返し聴く、あるいは聴き取れないものがあったら文字で確認してから再度聴く、というのが理にかなった学習法なのだ。