教育投資の回収に必死な親
しかし、そうした主体性のあるチャレンジ精神に溢れた学生を探すのは容易ではない。じつは偏差値上位校の学生ほど親に依存する傾向が強いという声もある。
前出のIT企業の人事課長はこう話す。
「優秀な女子学生が『受けているもう1社は転勤がないから』と言って内定を辞退してきた。なぜ転勤できないのと聞くと「親と一緒に住んでいるから」と言う。限られたコミュニティから外に出たくないという若者が多い」
食品業の人事課長も指摘する。
「有名私大のキャリアセンターの担当者に親が子どもの就職に口を出すのかと聞いたことがある。担当者に『どれだけ子どもに投資してきたと思っているんですか。小さいときから塾に通わせて結構な費用をかけて大学まで行かせた。名のある企業に就職してほしいというのは当然ですよ』と言われた。優秀な学生ほど親に依存している感じがする」
▼「親が泣いたので内定辞退します」
中堅ゼネコンでもこんなことがあったという。
「東大大学院の院生にうちにくる気はあるの、と聞いたら『御社を気にいっています。ぜひ入りたい』と言う。最終の役員面接でも、役員が『あなたが行くべきなのは業界最大手なんじゃないの。どうしてうちなの』と嫌みを言っても『御社が好きです、絶対に入ります』というので内定を出した。その後、役員から彼がうちにくる確率を聞かれて五分五分じゃないですかと答えたが、役員は8割の確率でくると言う。ところが蓋を開けたら内定辞退。本人に理由を聞くと、母親にもっと良い会社に行きなさいと言われ、それでもうちに行きたいと強く言ったら、最後には泣かれてしまったと言っていた。まあ、現実はそんなものだ」(同社人事担当者)