高級な羊羹にメロン、手紙添え

就職してもらうには学生自身の納得も重要だが、「オヤカク」(親の確認を取ること)も大事な要素になっている。

親に気に入ってもらうようにするには相応の気遣いもしなければならない。中堅IT企業の人事課長は語る。

「親に嫌われたら学生も辞退しかねない。会社も割り切るしかなく、せっかく内定を出しても親が反対しないように、お中元、お歳暮の時期に内定者の親に手書きの手紙を添えてとらやの羊羹を贈っている」

羊羹数本を贈ると、企業に対する親の信用度があがるのだろうか

贈り物として自社商品を送るのもひとつだが、安易すぎて誠意を感じてもらえないかもしれない。食品業の会社は内定を出した学生の親に手紙を添えて高級メロンを贈ったという。その効果があったのか、全員無事に入社した。

だが、入社後の配属先の評判がよろしくなく、期待はずれの社員が多かったので、翌年からはメロンを贈るのを廃止したという。

それでも「私たちの時代は大学の入学式や卒業式に親が出席するのが極めて珍しかったが、今は当たり前の時代になっている。親が就活にも口を出すのはおかしいと思っていても、現実を無視していては採用もできない」(同社人事課長)と指摘する。

▼面接で「うちのお母さん」連呼

正直、そこまで学生と親に気を遣う必要があるのか疑問だが、接待したり品物を贈ったりする企業は比較的中堅クラスの企業やベンチャー系企業に多い。学生の優秀層が集まる業界大手の石油業の人事担当者は親に依存している学生は極力採らないようにしていると語る。

「子供時代から大学時代までの経験についていろいろな角度から質問をして、その人の強みや弱みを探るようにしている。受け答えで目立つのは『うちのお母さん』という言葉だ。中には随所に『うちのお母さんにこう言われた』と話す人学生がいる。そのこと自体は悪いとは思わないが、あまりに母親に依存し、甘えん坊だなと思えば、落とすことにしている。親に依存し、自分で判断を下せない主体性のない学生は社会人として厳しい世界を生き抜いていけるのかという不安を持っている」