仕事の専門分野でなくても、一流のビジネスマンになるために学んでおきたいことがある。
各界の第一人者たちが長く読み継がれる入門書を厳選してくれた。
法政大学人間環境学部准教授 武貞稔彦氏●1966年生まれ。東京大学卒。海外経済協力基金(現・国際協力機構)に勤務しインドなどに駐在した後、東大大学院で学び2010年から現職。国際協力学博士。

世界的にビジネスの新興国シフトが起きている。しかし先進国とは異なり、想像を上回る多くの困難が伴うのが新興国でのビジネスだ。精神的に追い詰められないためにも、その国の成り立ちや文化的な背景、目前のビジネスの世界経済における位置づけなどを知り、視野を広くとることをお勧めしたい。

「新興国」という言葉には各国を新しいマーケット、安い労働力を使える生産拠点として経済的視点から捉え、違いを捨象して記号化している印象がある。実際にはどの国もどの国民も、ステレオタイプでは括れない。それぞれの国や地域に独自の文化や生活スタイルを持つ人々が暮らしていることを、常に頭に置いてほしいと思う。『ヒンドゥー・ナショナリズム』や『ヴェトナム新時代』にその一端が書かれている。

今日ではアフリカやアジアの新興国に関しても、ネット上でさまざまな体験談を読むことができる。便利ではあるが、悪しき先入観につながる恐れもある。実際に自分が現地に行くときは、思い込みにとらわれず、フレッシュな目でありのままを見るよう心がけてほしい。現地に来なければ得られないような発見が必ずある。そうした気づきのための素地を養ってくれるのが、ここで紹介する本である。