仕事の専門分野でなくても、一流のビジネスマンになるために学んでおきたいことがある。
各界の第一人者たちが長く読み継がれる入門書を厳選してくれた。
生物学者 福岡伸一氏●1959年、東京都生まれ。京都大卒。米ハーバード大研究員などを経て青山学院大教授。サントリー学芸賞受賞の『生物と無生物のあいだ』『動的平衡』ほか著書多数。

科学研究の現在は確かに細分化され、特殊化され、専門化されすぎているけれど、その背景にある探求の動因はシンプルで大きな問いかけである。だから文科系、理科系という分類にこだわらず、このシンプルで大きな問いと、その答え=大きな絵(ビッグピクチャー)をかいま見せてくれるような本が科学の良書といえる。

科学の問いは、その源をたどれば少年の問いに帰着する。自分は何者か。どこから来て、どこへ行こうとしているのか。自分はなぜ自分なのか。自分を包むこの世界の成り立ちはいったいどうなっているのか。

自分の成り立ちを垂直に突き詰めて考えると、それは生命とは何か、という問いになる。生命体は細胞からなり、細胞は分子からなる。分子は原子からなり、原子は素粒子からなる。素粒子はクオークからなる。ではクオークはいったいどこから来たのか。それを考えるためには宇宙の出発点のことを考えないとならない。極小の問いは、極大の問いにつながる。

一方、どこから来て、の問いを水平に考えてみると、現在、この地球上に多様な文化と文明を持って共存している(あるいは闘争している)、人類の起源という問いになる。いずれもとても魅力的な、シンプルで大きな問いである。