専業主婦や定年退職者にも新しい仕事を

ランサーズは様々な事情から、これまで働きたくても働けなかった人々に恩恵をもたらしている。

例えば、ある専業主婦は子育てが落ち着いてきたので働こうと思ったが、疾患を持つ次女の託児所が見つからず、あきらめていた。しかし、ランサーズによって自宅で記事を書く仕事を始めることができ、金銭的報酬もさることながら、社会に参加できることがやりがいにつながっている。子供とばかり向き合っていると、育児ノイローゼにもなりかねないので、無理のない仕事は有意義だ。

企業を定年退職した男性は、ランサーズで文書の構成や英文の例文づくりなどの仕事から始めて、現在はブログの記事執筆を請け負っている。古代史から数学、コンピュータ、政治、社会などテーマは幅広く、学びながら収入も得られることがうれしい。

実家の農業を継いだ男性は、もともとウエブデザイナーとして働いていた経験を活かし、農業の空き時間にランサーズでウエブ制作の仕事を請け負っている。本業の農業と副業双方で息抜きにもなり、収入も増えた。

ランサーズの仕事が本業の人もいる。あるデザイナーは寝具・インテリアメーカーの仕事を請け、その仕事ぶりが信頼を得て、いまやパッケージデザインの8割近くを一人で受注している。他のクライアントからのリピート発注も多く、週3日ほど働いて、充分に生活できる収入を得ている。

現在、ランサーズで何らかの報酬を得ている人は1万人以上に増え、ランサーズのみで生活できる収入を得ている人は数百人になった。中には、地方で暮らしながら年収1500万円を稼ぐランサーもいる。

彼らは、驚いたことにクライアントの担当者と一度も顔を合わせたことがない。ランサーズでは基本的にクライアントに会ったり、打ち合わせすることなく、仕事が完結できている。

「インターネット上でのコミュニケーションを不安に思われる方も多いですが、実際にやってみると、クリエイターと企業担当者の方は、スムーズにやりとりされているケースが多いです」と秋好は言う。

通常、フリーのクリエイターを仕事に活用する場合、間に広告代理店やプロダクションが入る。企業にとっては個人と取引きするリスクが減る代わり代金は高くなる。クリエイターにとっても同じだ。間に余計な第三者が入らない方が都合のいいときも少なくない。