次の世代は確実に崖下に落ちる
今の日本の夫婦・親子関係は、構造的危機にあります。崖っぷちにいる親の次の世代が確実に崖下に落ちることが明白、という歪んだ社会構造に陥っているんです。
それを端的に示すのが子供の教育費です。ある程度の生涯所得を保証するための教育費の金額が、今は桁違いになってます。いわゆるグローバルエリートのチケットを手にするには、今や博士号かMBA(経営学修士)の取得が最低限の条件ですが、東京大学が始めたビジネススクールは受講料約500万円。米ハーバード大学やスタンフォード大学でもMBAを取るのに同程度の5万~6万ドル。加えて今後日本が置かれるであろう状況を考えると、英語と中国語プラスアルファの技能が必須。これでは、子供が30歳になるまで面倒をみなければなりません。
そうなると、子供2人をエリートに育てるには年収2500万円はないと難しい。普通のビジネスパーソンでは、今の税法上の手取りが年1800万円以上必要。それでも子供1人がギリギリです。
もちろん、そんな稼ぎなどない親が大半です。かつての中間層がいなくなった今、日本の次世代の子供は、飛び抜けた一握りのエリートを除く大半が、北京や瀋陽、上海を除く中国の中堅都市程度の生活水準・社会保障水準に収斂していくでしょう。
子供に十分な教育を「与える」ことができない。中途半端に金をかけても結局は“上”に行けず無駄になりかねないし、将来も保障されない。これは異常なことです。こうした状況に陥った国家は通常、戦争で事態を突破するものですが、それは絶対に避けなければなりません。
将来そうした状況の中で生きるであろう子供に、親は何を「与え」ればいいのでしょうか。新約聖書の「マタイによる福音書」7章24~27節にそれが示されています。「聞くだけで行わない者は皆、砂の上に家を建てた愚かな人に似ている」というこの一節は、知識を得るだけでは何の役にも立たない、その生きた使い方を身につけろと述べています。
雨が降り、川があふれ、風が吹いてその家を襲っても、倒れなかった。岩を土台としていたからである。
わたしのこれらの言葉を聞くだけで行わない者は皆、砂の上に家を建てた愚かな人に似ている。
雨が降り、川があふれ、風が吹いてその家に襲いかかると、倒れて、その倒れ方がひどかった。
新約聖書「マタイによる福音書」7章24~27節
つまり、教育にお金をかけられないなら、社会に出て確実に生かせる知識と、その知識を使いこなす術が身につくよう仕向けるんです。そういう「与え方」もあるでしょう。
それには、社会を知るために人生の代理体験を数多くさせておく。小説を読む。名作といわれる映画をDVDで見せる。これが後々生きてくると思います。それと国語と数学。国語で言語的な、数学で非言語的な論理を学ぶのです。この2教科をきちんとやっておくことで、言葉の正しい使い方がわかるようになります。