子供の返事がそっけなくなった。買い物に誘っても来なくなった……。成長の証しとわかってはいるものの、どう付き合っていけばいいか。百戦錬磨の塾講師が、難しい時期の子供との距離感と接し方をアドバイス。
子供は全員経験する、感情がぶれる時期
私は今、「思春期子育ての専門家」として講演を行ったり、本を書いたりしています。10年以上前、塾に勤め始めたとき、子供たちとうまくコミュニケーションが取れず、悩んでいました。「どうしたらいいか」とコーチングや発達心理学を学びながら小学校高学年から中高生までのさまざまなタイプの「思春期の子供」とたくさん接することで彼らの気持ちを学び、いい関係を築く方法を見つけてきました。その方法をお伝えしようと思います。
思春期というのは一言で言えば「ぶれる時期」です。親が話しかけたら「ウザい」と言って拒絶するときもあれば、「ねえねえ」と子供から寄ってくる「距離感のぶれ」、激しく感情をむき出しにして怒るときもあれば、おとなしくて聞き分けがいいときもある「感情のぶれ」など、振れ幅が大きい不安定な時期が思春期といえます。女の子だったら小学3~4年生ごろから、男の子なら中学1年生ぐらいから表に出てきますが、中には小学校1~2年生から少しずつ始まっている子もいます。
大人になる前の段階である彼らはぶれながら、自分は何者か、自分はどういう価値があるのか、何のために生きているのかなどを考えながら、自分を作っているわけです。その始まりとして、社会や、身近な大人である親や先生を否定しながら、もがいているというのが彼らの内面なのです。
私が家庭教師をしていたある女の子の例を挙げましょう。まじめで勉強もするし、宿題も必ずやる子でしたが、ある日、いつも通り彼女の部屋のドアを開けるとベッドに横になり、壁側を向いてイヤホンで音楽を聴きながら、スマホをいじっているんです。私が挨拶して部屋に入っても、こちらに背中を向けたまま。私はいつもの席に座って、彼女の漫画を読みはじめました。彼女は結局2時間、ずっとベッドに横になったままだったので、私は「じゃ、また来るね」と声をかけて帰りました。そして次の週、部屋に入ると彼女はいつものように机の椅子に座っていて、勉強しました。彼女がベッドで横になっていたのは、その時1回だけです。
思春期ってそういうものだと思うのです。ベッドに横になっているときに、「どうしたの? 勉強しようよ!」と近づかれるのは彼女にとっては嫌なことのはずです。そして、次の週も「先週はどうしたの?」「なんで挨拶してくれなかったの」と、説明できない気持ちの揺れを蒸し返されても、きっと彼女はいい気持ちはしないでしょう。
一方で「うちの子、全然反抗しないのですが、大丈夫でしょうか?」と聞かれることがありますが、私は気持ちの変化がない子はいないと思います。表だって言葉や態度に出ていないだけで、気持ちの変化はどの子にもあると思います。