怒っても「絶対に」うまくいかない

思春期の子供の中には乱暴な行動をとる子供がいます。モノを投げつけてきたなどという話を聞くこともあるでしょう。乱暴な行動がエスカレートするのでは、と心配になるお母さんがいるかもしれませんが、幼いころに親の愛情を受けて育っていれば、ひどい暴力をふるうことはほとんどありません。

モノにあたったときの気持ちを子供に聞いてみると、イライラした気持ちをすっきりさせたくてやったと言います。衝動的にやった行為で、誰かを傷つけようとは思っていないのです。笑い話ですが、ある家庭で息子がリモコンを投げたとき、お母さんが「壊れるじゃないの!」と怒ったら、「壊れないように投げているよ!」と息子に言いかえされた、という話を聞いたことがあります。

そしてそのときの状況を、よくよく聞いてみると、乱暴な行動をする前段階で、たいていお母さんが子供にとってうっとうしいことをしているケースが多いです。「宿題したの?」「いつまでゲームやっているの?」……としつこく問い詰めるとか。触れてほしくないのに、さらに突っ込まれると「あぁもう、うるさいな」「離れてよ」という言葉の代わりに大きな声を出したりモノにあたったりしてしまうのです。この時期の子供がモノを投げる、壁を蹴るぐらいは、大目に見てほしいと思います。

正直に言うと、思春期の子供たちに、私だって腹が立つことはあります(笑)。でも怒ったところで「絶対に」うまくいかないことも経験上わかりました。そして、子供を変えようとしても、たいていうまくいきません。

子供が思春期になったら、親の側が役割を変えたほうがいいと思います。小学生時代は、子供に教えたり叱ったりする機会が多いですが、思春期の子供はそれがうっとうしい。子供が元気で気持ち良く過ごせるように食事や環境を整えるのが役割だと思ったほうがうまくいくと思います。次回(4月13日更新予定)は私の経験から得た、思春期の子供と接するための方法を紹介します。思春期の子供との距離感がわからないなら、いろいろな方法を試してみるといいと思います。試している間に、気が付いたら、思春期のもっともイライラする時期が終わっていた、なんてこともあるかもしれませんね(笑)。

大塚隆司
1969年生まれ。個別指導塾に10年以上勤務し、1000組以上の親子関係をサポートしてきた。現在は講演活動やコーチング、カウンセリングを活用した家庭教師を行っている。『マンガでわかる!思春期の子をやる気にさせる親のひと言』『思春期の子と心の距離を感じたときにできる大切なこと』などシリーズが人気を呼び、累計10万部を超える。
(大塚隆司=教える人 鈴木理絵=構成)
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