順調に市場拡大中 アフリカ諸国が銅像をつくるわけ
アフリカにおける北朝鮮の銅像ビジネスは、遅くとも70年代には始まっている。77年にはトーゴの都市ロメでエヤデマ大統領の銅像を、78年にはシエラレオネの首都フリータウンで会館を建造、そのほかエチオピアなどでもビジネスを展開している。90年代に入ると、北朝鮮の経済悪化に伴い件数は一時激減したが、00年代から再び活発化し、北朝鮮の報道から確認されるだけでも、ナミビア、赤道ギニア、アンゴラ、セネガル、コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、ギニアなどで、順調に市場を拡大している。
「銅像ビジネス」と一言でいっても、その実態は銅像のみに留まらない。博物館、記念館、国会議事堂や大会堂など、大型建造物建設すべてを含んでおり、取引先はアフリカを超え、ヨーロッパにまで及んでいる。ドイツのフランクフルト市は、町の中心部にある1910年作の古い噴水修復作業を北朝鮮に依頼した。100年前の噴水を修復する技術者がヨーロッパに少ないうえ、価格がまた魅力的だったからだ。修理代は20万ユーロ。日本円でおよそ2800万円だが、同じ作業をヨーロッパの会社に依頼すればおそらくその5倍はするだろう。
北朝鮮が装飾的建造物に高い水準を有するのは、とりもなおさず自国の指導者像や巨大建築物を数多く制作・建造してきた実績があるからだ。国も積極的に職人を育成し、銅像制作専門チームを組織してきた。万寿台(マンスデ)創作社という名のこの国策会社には、芸術大学を卒業したエリート約3000人が集結し、国内外の銅像すべてを制作している。これほど多くの銅像建築専門の職人を抱えている工房は、世界広しといえど北朝鮮以外にはないだろう。