さて、そんな北朝鮮だが、外貨を得るのは簡単ではない。この国は長らく軍事優先の先軍政治を敷いてきた。常に国民の生活より軍事が先行する戦時下にあっては、軍需産業は栄えても民間産業は後手に回る。国内向けの民需品や電化製品は生産しているが、とても国外向けに輸出できるようなレベルにはない。勢い、北朝鮮が輸出できる商品は、自らが得意とする武器やミサイルなどの兵器分野となる。
実際にこれまでも北朝鮮は中東やアフリカの紛争地帯に大量の武器やミサイルを輸出してきた。ところが近年このビジネスに陰りが見えてきている。06年に国連安保理決議により、北朝鮮の核実験および弾道ミサイル開発が禁止され、また武器やミサイル、軍艦などの兵器の禁輸も採択されたからだ。国連安保理決議の制裁には罰則はないため、従来通り北朝鮮と武器貿易を続ける国もあるが、特に中東向けへの武器輸出に関しては欧米諸国の監視が強化している。今後も安定して武器貿易が継続できるかは不透明だ。
そのほか北朝鮮には金やレアメタルなどの鉱物資源もある。だが絶え間ないエネルギー不足や資材不足により、本格的な調査や採掘作業に取り掛かれないのが現状だ。あるいは人民を出稼ぎ労働者として他国に出向かせる労働力輸出もあるが、どんなに働かせたところで、一人あたりの月給はせいぜい7000円から多くて2万円ほど。その大半を国が強制的に吸い上げても、国家を支えるほどの収入には達しない。
そんななか、にわかに脚光を浴びているのが銅像ビジネスなのだ。他国から銅像制作の依頼を受け、デザインと制作を請け負い納品する。この商売の最優良市場が実はアフリカ大陸である。