7月1日に開催された日朝局長級協議で、北朝鮮におけるすべての日本人に関する包括的な調査を行うための「特別調査委員会」の機能や構成などを北朝鮮側が伝えてきた。「特別調査委員会」は、30名程度の人員で構成され、地方にも支部を置き、調査対象ごとに分科会を設けるという。また、「特別調査委員会」の委員長と副委員長、分科会責任者は内定済みであり、その役職と名前も通報された。

この「特別調査委員会」による調査について、不安や期待が入り交じった意見はよく耳にする。今まで北朝鮮に騙されてきたから不安だとの意見もあれば、調査が始まることへの期待感を抱く意見もある。どういう調査結果が出るのか、少なくとも日本国内では知られていないわけだから、当然に不安を抱く意見は出てくるであろう。

「特別調査委員会」について日朝が発表した内容に若干の違いがあることに不安を抱く向きもある。たとえば、「特別調査委員会」に設けられた分科会は4つあるが、日本側は、拉致被害者分科会、行方不明者分科会、日本人遺骨問題分科会、残留日本人・日本人配偶者分科会の順番に発表している。しかし、北朝鮮側は、日本人遺骨問題分科会、残留日本人・日本人配偶者分科会、拉致被害者分科会、行方不明者分科会の順番に発表した。これは日朝間における分科会の優先順位の違いであり、拉致問題や特定失踪者問題を北朝鮮側が軽視していると見なす向きもある。

「特別調査委員会」の構成にも不安を抱かせる要素がある。たとえば、拉致被害者分科会には、保健省が入ることになっている。保健省は医療機関を管理下に置いていることから、カルテや死亡診断書などを調査するために拉致被害者分科会に入れられたのであろう。これは、拉致被害者に死亡者がいることを前提とした調査とも受け止められる。不安を感じる向きがあっても当然であろう。いずれにせよ、日本国民が全員満足するような調査結果を期待することは難しいと思われる。その調査結果に対して、日本がどう向き合うのか。今後、それが問われることになろう。

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