この「徹底対話作戦」によって、山口支店は劇的な変化を遂げた。私と部下の距離は一挙に縮まり、注文を取るために深夜まで粘ってくれるような営業マンが増えた。全員が高いモチベーションを持っている集団は、最強だ。山口支店はまたたく間に、1人当たりの売上高と利益で全国1位の成績を獲得してしまったのである。
言葉に説得力を持たせるには、率先垂範の姿勢が不可欠である。当時の私には、部下の2倍は仕事をしているという自負があった。私が率先して支店の業績を上げようとしていることは、誰の目にも明らかだったはずだ。もしその裏付けがなかったら、「徹底対話作戦」は意味をなさなかっただろう。
石橋オーナーの話に戻ろう。
その後も、オーナーが様々な機会を捉まえて私をテストしていることは、薄々感じていた。しかし、私はしつこい質たちなので、どうしてもそれを本人に確かめたかった。オーナーが病気で入院して弱っているとろを見計らって、切り込んだ。
「山口支店以降、ずっと私をテストしてきましたやろ」
オーナーはベッドの上で渋々、首を縦に振った。
テストばかりではたまらないと思う人もいるだろう。私もそうだ。だが石橋オーナーのテストには情があった。
最晩年、石川・羽咋の別荘での療養中のことである。業務報告で訪ねた私と夕食を終えた束の間──。
「君はかけがえのない人だから、体を大切してくれよ」
「えっ、かけがえのないのはオーナーです」
「いや、君や」
大和ハウス工業の創業者、石橋信夫の言葉はいまでも私の中で生き続けている。
1938年、兵庫県生まれ。県立尼崎高校、関西学院大学法学部卒。鉄鋼商社を経て、63年大和ハウス工業入社。93年グループ会社の大和団地社長に。2001年大和ハウス工業社長。04年より現職。著書に『熱湯経営』『先の先を読め』『凡事を極める──私の履歴書』。
座右の銘・好きな言葉:凡事徹底
座右の書・最近読んだ本:デール・カーネギー著『人を動かす』
尊敬する経営者・目標とする経営者:石橋信夫(大和ハウス工業創業者)
私の健康法:シンプルな朝食(発芽玄米、ヨーグルトなど)