エリート教育でも国際競争力は上がらない

大学倒産に詳しい、桜美林大学院の高橋真義教授は「少数の大学だけを選別してエリート教育しても、我が国の国際競争力を向上させることにならない。競争力は、裾野があればこそ産まれるものだ」と語る。建学の理念に基づいて多用な人材を養成することをミッションとしているローカル大学、特に地方の小規模私立大学の持つ人材養成力を矮小化すべきではない。

今回の提案には、この視座が欠落している、と警鐘を鳴らす。地方の小規模私立大学は18歳人口の減少に加えて地元残留率の低下により存続そのものが危機的状況にある。地方にとっては、たとえ極小規模大学であっても、地域から大学が消滅した場合の、地域の民力の低下は想像を超えるものである。「それこそ、政府が進める地方創成に逆行することではないか。地域の文化的水準の牽引、地域活性化、地域貢献をしている地方の小規模大学の役割は、過小評価すべきではない」(高橋教授)と言う。「大学教育」「企業活動」を同一のテーブルに載せて議論することは正しくない、という主張だ。

冨山和彦氏の提言、本間正雄氏と高橋真義氏の主張、一見違っているように見えるが、共通する点が一つある。それは、地方の疲弊を押さえ込むために、ローカル大学の人材養成力に対する支援の制度設計を、今後どのようにして行くのか、という点だ。文科省だけに任せるのではなく、政府が一丸となり、100年の超長期的視座に立った抜本的な高等教育改革をどう推し進めるのか、それが今問われている。

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