大学教員の質とカリキュラムに問題あり

冨山レポートでは、教員は民間企業から選抜し、実践的な教育をせよと提言する。Lの大学には従来の文系学部はほとんど不要であり、アカデミックラインの教授には辞めてもらうか、残るなら職業訓練教員として再教育をせよと指摘する。また理系の教授でもGの世界で通用する見込みがなければ同様にすべしとの提言だ。

確かに大学の教授ほど気楽な商売はないだろう。研究の時間がとれない、高校の生徒募集に出前講師をやらされる、雑務に時間が取られると不満たらたらの教員も少なくない。企業では当たり前のことが、不満として口をついて出てくること自体が恵まれているという自覚がない。数年間にわたって論文を1本も書かず、毎年工夫もなく同じ講義をくり返す授業。もちろん優秀な教授もいるが、研究と質の高い学生教育を両立できる人は少数だろう。本間氏は言う。

「米国の大学は科目数はそんなに多くはないけれど、考える教育に重点を置いているじゃないですか。法学部を例に取ると、日本では法律の逐条解説を延々とする教員が多いけれども、そんなことをやったって、生半可な知識しか身につかない。むしろ法律的な物の考え方、例えば死刑廃止論や安楽死問題の是非ということをグループワークでやって、考えさせる授業をするべき」

確かに教師が一方通行で教えるだけなら、「MOOC(ムーク=Massive Open Online Course)」で十分であり、むしろ質の高い授業を無料で受けられる。中でもNTTドコモなどと今年4月に開始したgacco(ガッコ)では、東大や京大、早稲田、慶応などの教員が参画。今年度中に18講座の無料公開が進む。今後大学は、少子化による2018年問題で入学者の減少だけでなく、こうした無料のインターネット授業のような新たなトレンドにも直面する。冨山氏が言う「L大学の教員評価は、論文数や研究成果ではなく、学生の就職状況を基準に評価。研究を評価するとしたら、地域産業の振興や地域勤労者の生産性(賃金)向上に直結するテーマのみに限定する」という話も頭から否定できないのではないか。今の大学教員はこの提言をどのように受け止めるだろうか。