短期のアルバイトにも徹底教育するワケ

経営理念やミッション、ビジョンといった企業の想いが明確になったら、次はそれを従業員みんなで共有することが大切です。

私は17年前にディズニーから離れましたが、ディズニー好きの遺伝子は子にも引き継がれたらしく、大学生になった娘が夏休みを利用してディズニーシーのキャストのアルバイトをすることになりました。ディズニーのキャストは、現場で働き始める前に、ユニバーシティという教育部門が行う導入研修を必ず受けます。はたして、古巣はいまどのような教育を行っているのか。興味を引かれた私は、娘に内容を聞いてみました。

「おまえはディズニーでどんな役割を担うんだ?」
「『We Create Happiness』だよ。遊びにきてくれたゲストをハッピーにすることが私の役目なの」

We Create Happiness(ハピネスヘの道つくり).

これはディズニーのもっとも根本的な理念であり、いついかなるときにも忘れてはいけないミッションです。その思想は、アトラクションの設計からキャストの対応、裏方の掃除に至るまで、ディズニーが提供するものすべてに貫かれています。

ただ、ここで強調したいのは、ディズニー「想い」の中身ではありません。注目してほしいのは、短期のアルバイトにも、想いの共有を求めて教育を行っている点です。

教育期間が短いと教育効果があらわれにくく、教育によって何らかの成長をしたとしても、それを現場で発揮する前に退職時期がきてしまう可能性があります。そのため短期アルバイトに対して、最低限の教育に留めてお茶を濁す企業が少なくありません。

CSの観点からいうと、この考え方は不正解です。顧客にとって、目の前のキャストが新人であるかベテランであるかは関係ありません。多くの顧客にとって、ディズニーへの来園は数年に1度程度しかないイベントです。にもかかわらず、たまたま新人キャストに当たって期待を裏切られ、「新人なので、われわれのミッションを理解していませんでした」と弁明されたらたまったものではありません。

ディズニーでの時間をかけがえのないものにしてもらうためには、そこで働く人すべてにディズニーの想いを理解してもらう必要があります。そのことをよくわかっているから、短期間しか働かないキャストに対してもユニバーシティ教育を行うのです。企業の「想い」は、みんなで共有してこそCSにつながるのです。

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