未知なるものに出会ったとき人は感動する
顧客はいったいどのような場面で感動を覚えるのか。ひとことでいうと、未知なるものに出会ったときです。どれほど質の高い商品やサービスも、すでに経験しているものなら顧客にとっては想定内といえます。感動を起こす条件は、顧客の想定を超えること。これまでに経験したことのない価値を提供できたとき、顧客は心を揺さぶられます。
もちろん、未知なるものなら何でもいいわけではありません。顧客が感動するのは、出会った瞬間に「これこそ自分が求めていたものだ」と感じる商品やサービスです。未知なるものの中でも、顧客に潜在的なニーズがあり、具体的に提示されてはじめてそのニーズに気づかせてくれた商品やサービスに、顧客は感動を覚えます。
本人も気づいていないニーズが満たされたときに感動が生まれるのだとすると、企業が取るべきアプローチも見えてきます。まず、顧客の潜在的なニーズを把握すること。そして、潜在的ニーズを満たす商品やサービスを具体化して提案すること。これがうまくいったとき、CSは満足レベルを超えて感動レベルに達します。
潜在的ニーズは顧客本人も無自覚なので、いくらアンケートを取ってもわかりません。
企業にできるのは、想像することだけ。「顧客はこんな商品を望んでいるのではないか」、「こうしたサービスをすると、顧客は驚くのではないか」と勝手に想像して、それを具体化するしか道はないのです。
ただ、想像するしかないからといって、破れかぶれになる必要もありません。想像力は、観察によって磨けます。何もないところから想像するのは「空想」に過ぎませんが、観察したディテールを材料にして考えを組み立てれば、想像は現実感のある「仮説」になります。仮説の精度を上げるには、対象に好奇心を持って観察すること。これに尽きます。