ポテンシャルを「見える化」するABCとは
ここで、実際にD君からE君へと変化した事例をご紹介しましょう。
企業からのご依頼が多い私のところには、個人で、ポケットマネーをはたいてコンサルティングを受けにくる方も多くいます。きっかけは、さまざまです。新規開拓のリーダーになったことで、それにふさわしく、自分を戦略的に磨きたい、というポジティブなケースもあれば、成績を挙げないと減俸されるという予告を受けてやってくるネガティブなケースもあります。たとえば、こんなビジネスパーソンです。
外資系ITメーカー、コンサル営業のYさんは、上司に促され、当社に個人コンサルに訪れました。事前の入手データからは30代後半なのに、会ってみると20代の若者にも見える彼ははなはだ信頼感に欠け、クライアントである中小企業の経営者に「君のような若い人にいわれてもねぇ……」となかなか大きな契約が取れず悩んでいました。当社を訪れたのは、上司から「その幼く見える外見を何とかしないと年収を半分にするぞ」と言い渡されたからです。
そこでまず、外見力の基本的なファクターである服装を、職種と知性を表現するスーツに変え、相手に合わせたシャツとネクタイのコーディネーションをアドバイスしました。さらに何度か通っていただき、表情づくり、姿勢、動作、立ち居振る舞い、ビジネスマナーのブラッシュアップ、話し方の基本と好印象を与える効果的なプレゼンテーションをトレーニングしていきました。
ヘアスタイルもさわやかに決まり、ひととおりのコンサルテーションを終えた頃、表情はいきいきと、目には輝きが宿り、背筋はピンと伸び、歩き方も自信に満ち……。彼は、すっかり「できるE君」に変わっていました。
その後商談に臨むと、効果はてきめん。以前は決断を渋っていた経営者に同じ事を言っても、「確かに、あなたの言うとおりだね」と変化し、大きな契約もスムーズに決まり始めたのです。やがて、会社との契約更新日。彼の年収は、半分になるどころか何と数百万円も上がっていました。
D君を、できるE君に変えたのは、外見力を構成する次の3つです。
A:Appearance(=プロフェッショナルなアピアランス)
B:Behavior(=洗練された立ち居振る舞い、表情、仕草)
C:Communication(=伝わる話し方)
私がつねに提唱しているのは、中身と外見に一貫性を持たせる、ということです。その人の持つポテンシャルを最大限に引き出し、それを、服装で、立ち居振る舞いで、マナーで、話し方で、目に見える形で表現して行く。それらを統括したものが、自分を語る力、外見力なのです。第一の壁をクリアし、第二の壁を超えるための外見力。それは、ことに営業にたずさわる人に必須のコミュニケーションスキルといえます。中身を磨き、効果的に表現するためのABC。では、どうすればいいのか。次に、具体的なノウハウをお話ししていきましょう。