企業の好決算が相次ぎ、企業業績の急回復の兆しも出てきて、景気回復に期待が高まっている。辣腕&変革経営者が求める「人材の条件」を語り尽くす。

徹底した議論が社員を一体化させる

東燃ゼネラル石油 武藤 潤社長

私たちは、原油の輸入から精製、販売までを手がけています。扱っているのは、ガソリンや灯油といったコモディティ(必需品)。「味」や「におい」のように、消費者にわかりやすい違いがあるわけではなく、いわゆる「差別化」を打ち出すのが難しい商品です。

そんななかで、お客さまに選んでもらえるようなサービスステーション(ガソリンスタンド)やブランドをつくるには、お客さまに喜んでもらえる付加価値をつけなければなりません。この付加価値を生み出して提供していくのが「人」なのです。「人材」は「人財」であり、人こそが同業他社と違ったサービスや価値を提供できる「源泉」にほかなりません。

私たちは2012年6月、大きな転換を遂げました。アメリカの石油大手エクソンモービルから日本事業を買収して、新たなスタートを切りました。外国資本が過半数の株式を所有する会社から、日本の資本が大半を握る会社へと体制を変えました。

世界のエネルギー業界をリードするエクソンモービルと10年以上にわたって密接に仕事をしてきたので、グローバル企業とはいかなるものか身をもって経験してきました。

エクソンモービルは、働いている人が多様です。国籍や宗教、言語など実にさまざま。考え方、意見、行動も異なります。

多様だからこそ、たとえば一つのプロジェクトを立ち上げるとき、さまざまな意見を戦わせ、議論にかなりの時間をかけます。その結果、一つのゴール(目的)が決まったときの出席者の「納得のレベル」が非常に高い。全員が一丸となって、プロジェクトを進めることができるのです。

一方、日本はお互いに相手の意図を察することができるハイコンテクストな国なので、議論することなく、リーダーの指示や意向に沿った動きができます。しかし、納得のレベル、意識の共有といった点で、ばらつきが生じます。同調意識のためか、意見を述べる人も、さほど多くはないでしょう。一つのゴールに向かう“熱の総量”が、日本企業は、欧米企業より、劣るかもしれません。しっかりと意見を戦わせて議論を重ねたうえで物事を決めるプロセスを踏む。このプロセスが仕事の推進力を生んでいきます。

ただ、あまりにも役割と責任が明確なため、チームワークがおろそかになりがちなのは、欧米の企業ではよくあることです。企業の成長にとって、「助け合い」の精神は欠かせません。ここは、日本に本社機能を置く私たちの強みであります。