企業の好決算が相次ぎ、企業業績の回復の兆しも出てきて、景気回復に期待が高まっている。辣腕&変革経営者が求める「人材の条件」を語り尽くす。
三井住友FG 宮田孝一社長

銀行の仕事は、企業の資金調達を裏方としてサポートするだけではありません。ビジネスチャンスの情報提供、ビジネススタイルの助言、販売先の紹介も銀行の仕事です。

ありとあらゆる業種のお客様とお付き合いするということは、極端に言えば、世の中の森羅万象と関わる仕事です。そういう業務に望ましい人材には、4つの条件があります。

第1に「情報への感度」、つまり情報への好奇心です。多種多様なお客様のビジネスに好奇心を持てるか、お客様を好きになれるかということです。

世の中にはいろいろな情報が飛び交っていますが、実際にビジネスを手がけている方々と生の会話をするのが、いちばん新鮮な情報を手に入れる手段です。いわば “情報が飛び交っている交差点” の真ん中にどれくらい立てるかが勝負なのです。

第2の条件は「柔軟な発想」です。情報の交差点に立って聞こえてきたお客様のニーズに対して、豊かな発想で解決策を提案できるか、さらに先にいく提案をできるかが問われます。

その基盤となるのは専門性です。専門的な研鑽を積み、確固たる知識やノウハウを基に、柔軟な発想でお客様の悩みを解決することが重要です。

私自身、例えば石油業界のお客様に会うときは、受験参考書を買い込み、せめて有機化学の “カメの甲” くらいはわかるように勉強していました。

人と会うだけでなく、読書も発想を磨く力になります。私はその時々の問題意識に合わせて本を読んでいます。

映画やテレビは進行するペースが決まっていて、見ている側が立ち止まって考える余裕がありません。その点、本は自分のペースで進み、立ち止まっては自分の考えを検証できます。

本は、いろいろな意見や考えに触れるいい機会になります。そうやってさまざまな人、さまざまな分野の話を見ていると、個々の知識が有機的につながり、新たなアイデアが生まれることもあります。