「ご苦労さん」より「一緒に頑張ろう」

第3の条件は「決断力」です。ビジネスをやっている以上、どこかで判断を下さなければなりません。

「この件については、A、B、Cの3つの問題があります。まずAは……」などと問題点を挙げていくような議論は何となく高尚に見えるかもしれません。一方、「細かいことはよくわからないけれど、こういうふうにやってみたら」とか、「とにかくやろうよ」といった働きかけは低級に思われているようです。

しかし、ビジネスはむしろ後者のほうが大事で、とにかく決断して行動に移すという前向きな姿勢が大事です。

そして最後の条件が「行動力」です。せっかくいいアイデアを思いついても、そこで止まっていてはビジネスになりません。実際の行動に移し、行動力を発揮してビジネスに結びつけなければなりません。もちろんスピードも重要です。アイデアを競合他社より早く実現しなければ勝負には勝てません。

そこまで全体の流れを理解したポジティブな人こそ、私たちのグループ全体で必要とされる人材です。

私は、常にこういう人材であってほしいという期待を込めて、機会あるごとに、できるだけ平易な言葉で愚直に語り続けています。

人材に関して、私はディーリングルーム時代に2つのことを再認識しました。

まず国債でも為替でも何らかの方針を即座に打ち出せなければ結果は出ません。売るのか買うのか。迷っていたら何にもならない。動けばほぼ瞬時に結果が出ます。決断力の訓練になりました。

もう1つは、どんな立場になっても、自分より優秀な部下が必ずいるということ。ディーラー上がりではない、最もマーケットがわからない人間がいきなり部長になったものですから、大学受験以来の猛勉強をしました。

ですから優秀な部下に業務を的確に任せるしかないのですが、それが現場の活性化につながりました。もちろん、権限を与えて自由にのびのびと実力を発揮してもらう一方で、暴走回避や問題発生時の早期対応が重要です。そこで大切なのがコミュニケーションです。

コミュニケーション力は、上司と部下の双方に求められます。問題が発生して部下が報告に来たとき「何でそうなったんだ」と怒鳴っても無意味です。「よく言いにくいことを報告に来てくれたね」と受け止めればいいのです。

組織では、どこかで問題が起こるものです。その報告にいちいち怒っていては、やがて部下は報告を遅らせたり、隠したりするようになります。

それより、不完全でもいいから早く情報を共有し、チームワークで知恵を出し合って解決する。それが組織なのです。報告のラインも短いほどいい。ハンコが7つも8つも押してある紙はいりません。